鋸岳
甲斐駒ケ岳・鋸岳
鋸岳第二高点から第一高点を望む
【行程】 10/14(土)晴れのち曇り [たまプラーザ2:30=(車)=戸台大橋6:05/6:20=(バス)=北沢峠7:05/7:23−双児山9:24/9:38−駒津峰10:17/10:28−六方石10:56−甲斐駒ケ岳12:07/12:37−鎖場13:25−六合目石室13:49−三ツ頭14:49−熊穴沢ノ頭15:12(泊り)]
10/15(日)快晴 [CS6:26−中ノ川乗越6:54−第二高点7:38/7:56−大ギャップ8:16−鹿窓8:51−第一高点9:20/9:46−角兵衛ノコル10:16−岩小屋11:21−角兵衛沢出合12:50−第二砂防ダム13:52−戸台大橋14:51/15:06==たまプラーザ20:13]
【メンバー】 隊長、林道の鴉天狗
○7月の「海の日」に今回と同じコースで鋸岳に挑戦しましたが、悪天候のため6合目から丹渓山荘に下りました(・・恐怖の廃道下り)今回はそのリベンジです。先週の三連休は北アルプスで吹雪による遭難騒ぎがあったばかりですが、南アルプスでは未だ秋真盛りです。洋上の台風の動きは気になりますが、晴れとの天気予報に賭けて出撃いたします。
○戸台大橋に着いたのは始発バスの5分前、慌てて着替えて最後のバスに滑り込みセーフです。北沢峠からは最短の双児山ルートをとります。いきなりの登りで暫く山から離れていた身体に縦走ザックが堪えます。急ぐ人々をパスしてマイペースで樹林帯のなかを進むと、やがて森林限界を抜け双児山です。鋭く天を突く北岳が印象的でした。
○駒津峰で仙水峠からの道を合わせると急に人が多くなります。六方石からは直登ルートを通りますが、案に相違して団体が登って行きます。出だしの難場で大渋滞を引き起こしているじゃありませんか。暗い気持ちで突入いたします。直後に勢い良く登山隊を追い抜いていった若者達でしたが、女の子が行き詰まり大幅にスローダウンでした。
○冬服での登行なので全身汗まみれ、Tシャツになって最後の登りを頑張ります。広い山頂には50人ほどの人が群れていましたが、軽装備の若者が多いのに驚かされました。残念ながら鋸岳方面はガスが掛かり展望は得られません。上空に雲が広がると途端に寒くなり、それを機に腰を上げます。
○前回は雷鳴に追い立てられるように下った稜線ですが、今回は時間も早いし余裕です。唯一の鎖場も岩が乾いていれば怖いものなし。ところが最後の5mのハング気味の場所で脚が滑って、手だけでぶら下がる状態になってしまいました。左足のつま先でスタンスを探しますが、変な動きに足の指が攣りそうになります。慌てて右足を横に出して無理やり身体を引き上げようとしたら、右の三角筋が本当に攣ってしまいました・・・アイテテテ
○必死で鎖にぶら下がりそのままズルズルとクライムダウン、冷や汗一杯でした。途中で擦れ違った登山者にルートの話を聞くと「明日の行程を考えたら今日はできるだけ先に進め」とのこと。6合目石室をパスして未知の領域に進みます。三ツ頭のピークを越えると烏帽子岳への分岐を分けます。後ろの方から盛んに話し声が聞こえて来るので追い上げられるように先を急ぎました。
○次のピークで仙丈側に絶好のテン場を発見!本日はここまでと致します。ガスで景色はありませんが風も強くはなく、鴉天狗の軽量ヘロヘロ天幕でも何とか過ごせそうです。お楽しみの宴会&夕食もつつがなく終え7時には早くもシュラフの中です。明け方どうも寒いと思ったらテントがバリバリに凍っていました。
○翌朝は5時起床。テントから顔を出すと、仙丈岳のシルエットのなかに小屋の灯りが煌き、黎明の南アルプスは静かに日の出を迎えようとしています。薄明るい天球には星たちが残り本日の好天は約束されます。出発準備中に6合目石室に泊った3人パーティーが通過しました、昨日の声は烏帽子岳への足慣らしだったようです。我々も半時間遅れで後を追います。
○樹林帯の下りからは木々の間に鋸岳の荒々しいピークが望まれます。下り切ると中ノ川乗越です。コルからはガレ場の急登でジグを切って登ります。先行者も居ますから念のためにヘルメットを装着しましょう(馬子にも衣装で気が引き締まります)息を弾ませながら第二高点に到着です、雲ひとつ無い大展望でした。正面には第一高点がオベリスクの如く聳えます。
○ところが待てど暮らせど鴉天狗が登ってきません。ガレ場では20mぐらい後方にいたのですが、一体全体どうしたのでしょうか?10分以上遅れて着いた相棒の顔は紙の様に真っ白です。本日の核心部を前にして心配の種は尽きません。
○離れると危険なので鴉天狗をトップに難場を下ります。山頂から左方向に下りますが、どんどん主稜線から離れてゆき心配になるほどです。前方に岸壁が迫ると大ギャップの底をトラバースします、僅か10mほどですがザレた道は気が抜けません。今度はペンキに導かれて岸壁をトラバースです。対岸から見たらとても横切れる道ではありませんでしたが、実際は20Cm幅の岩盤上の安定したカモシカ道でした。
○大きくジグを切って高度を稼ぐと長い鎖場に到着です。稜線を仰げば黒々とした岸壁に鹿穴が明るい光を投げかけています。細かい石を落としながら鴉天狗が鎖を攀じ登って行きます。さほど難しい岩ではありませんが、念のため鎖を使わせてもらいましょう。鹿窓を潜ると甲州側の景色が飛び込んできます。まことに不思議な異次元トンネルでありました。
○小尾根を乗越すと小ギャップです。大きな鎖の付く下りは問題ありませんが、垂直で10mの登りは気が抜けません。中央のハング部分では先行する相棒が鎖に掴り、必死に腕だけで登る姿を見て隊長はビビリました。嫌ぁな気持ちで取り付きますが、登り始めればホールド・スタンスは沢山あるので、落ち着いて慌てずに行けば問題ありません。
○最後の難関をクリアすると痩尾根を通り念願の第一高点です。ピーカン360度の展望に疲れも吹き飛びました。雪を被った北アルプスの山々から伊那谷を挟んで中央アルプス、南アルプスは仙丈から北岳、間ノ岳、塩見、荒川・・・嬉しいな。甲斐駒からの厳しい縦走路は登山隊の勲章です。
○誰も居ない山頂を後に角兵衛ノコルへ急降下いたします。途中でメガネの紛失に気が付いた隊長は泣く泣く登り返しますが・・・山頂にメガネはありませんでした。失意のうちにコルに着きますと先行するオジサン達に出会いました。この先にある三角点ピークまでピストンしてきたそうです。何たる健脚、何たる物好き!聞けばこの方々は3人とも還暦オーバーとのこと、驚きです。
○角兵衛沢の下りはガレ&ザレの道を急降下です。途中から左手の樹林帯に入りますが傾斜はなかなか緩くなりません。岩小屋を過ぎると涼しい木陰の道です、膝が笑い出す頃に沢音が大きくなると待望の角兵衛出合です。戸台川には丸木橋が架かっていたので脚を濡らさずにすみました。
○ここからは長い河原歩きです。1時間ほどで第二砂防ダムに着きました、川は伏流になりますので右岸に渡りダムを越えます。そこからまた1時間で戸台です。駐車場奥のゲートを進むと車を停めた戸台大橋の駐車場でした。苦しい縦走を終えリベンジに成功した隊長と鴉天狗の顔は満足感に輝いていました。
○鋸岳縦走は当初懸念したほどの厳しさではありませんでした。要所に鎖が完備しペンキマークも整備されていましたので、夏山ハイカーの登山隊でも通過することができました。ただし天候が悪いと難場の通過は極端に難しくなるので注意が必要でしょう。
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