北岳・間ノ岳・塩見岳

北岳の歌はお預け

北岳山頂にて


【行程】 7/23(金)晴れ[新宿22:00=(かいじ119号)=甲府23:45/23:50=(タクシー)=]
7/24(土)
快晴[=広河原1:10/3:40−二俣5:34−八本歯のコル7:17−北岳8:13−北岳山荘8:53−中白峰9:30−間ノ岳10:30/11:10−三ツ峰11:45−熊ノ平小屋12:40(泊)]
7/25(日)
ガスのち晴[熊ノ平小屋3:10−竜尾見晴4:15−北荒川岳5:20−池ノ沢小屋分岐6:01−蝙蝠岳分岐6:37−塩見岳東峰7:07−西峰7:13−塩見小屋7:48−本谷山9:01−三伏峠9:52−水場11:05−塩川12:20/13:32=(伊那バス)=伊那大島14:40/15:11=駒ヶ根15:50/16:00=(中央高速バス)=新宿21:35]
【メンバー】 隊長(単独行)


○先週、飯豊に行く予定がドタキャンとなり悶々とした日々を過ごしていましたが、金曜日の梅雨明け宣言に辛抱たまらん隊長でした。(もう中年の思慮深さはどこへいったんじゃぃ)さっそくキップを買いに行きますが『アルプス』は臨時も売り切れ、しかたが無いので甲府行きの『かいじ119号』をゲット、これでルートも自動的に決まりました。

○甲府では同好の士とタクシーに相乗りして広河原へ直行です、吊り橋を渡りながら見上げた一面の星空に思わず息を飲みます。まだ1時過ぎなので小屋の前で2時間ほど仮眠ですがシュラフカバーではちと寒い、目が覚めてしまいました。まだ暗いうちに懐電を頼りに沢沿いの道を辿りますが、2年前に来ているので迷う心配はありません、30分ほどで明るくなってきました。

○ニ俣からは大樺沢を詰めます、最近の雨で雪渓はだいぶ少なくなり左岸の道に雪は全くありません。ジグザグの急な登りの後には梯子の連続で日頃の不摂生の身体にはいささかこたえます。ようやく八本歯のコルに着きますと北岳、間ノ岳と富士山の素晴らしい展望が待っていました。でもうっとりと見とれている時間はありません、主稜線までもうひと頑張りです、歩きながら鑑賞します。

北岳から甲斐駒ヶ岳、千丈ヶ岳○北岳の山頂からは千丈、甲斐駒、中央アなど360度の大展望で、2年前の真っ白な景色とは大違いです。心ゆくまでこの景色を楽しんで下山します。さすがに人が多くて一人では北岳の歌は歌えませんでした。(残念!)間ノ岳の登りは辛かった、寝不足と高山病と疲労の三重苦で思うように足が出ません、加えて山の大きさも勘を狂わせます。ようやく山頂に着いた時には恥じも外聞もなくヘタリ込んでしまいました。(ほんまに情けなやぁ)でもここからの眺めがまた素晴らしいのです、農鳥岳、塩見岳、荒川岳、赤石岳が目の前に広がっています。ここで心を決めて大休止とします。

間ノ岳から北岳、甲斐駒ヶ岳
○実はあわよくば「1日に百名山を3座登る」に挑戦しようかと馬鹿なことを頭の片隅で考えていたのですが、さすがに天下の第2峰です、不純な動機は木っ端微塵に砕かれてしまいました。もしスタートが肩ノ小屋なら可能だと思いましたよ(思うだけなら勝手でしょ)でも結果は大正解、塩見小屋まで辿り着いても完全予約制で泊まることはできませんでした(負け惜しみっぽいなぁ)ということで今夜は熊ノ平小屋泊りです。

○間ノ岳から塩見岳方面に縦走する人は数えるほどしかいません、ほとんどが軽装のピストンで1割りぐらいが農鳥岳への縦走です。(40分かけてゆっくり観察の結果です)人は減りましたが道はそれほど悪くも無く、ガレた尾根を最後の力を振り絞って三ツ峰に登ります。ピークを越えたら突然よたよた歩く先行者が現れました「おかしいなあ、さっきまで誰もいなかったのに」キツネにつままれる隊長です。なんとこの人は千丈岳から千塩尾根を大縦走してきたのでした。(最敬礼!)

○熊ノ平小屋は気持ちの良いところで小屋の前からは西農鳥岳が真正面に眺められ、冷たい水が小屋の前まで引いてあります。経営は東海フォレストですので食事の質も南アでは上等なほうでしょう。(でも弁当のおかずが魚肉ソーセージ1本というのは許せん=陰の声)睡眠不足の隊長は疲れたのでビールを飲んで昼寝をします、極楽、極楽。

○今日は13時35分に塩川発のバスに乗るべく早立ちします、コースタイムで11時間40分の行程ですので3時10分に出発です。エッ計算が合わないって、もちろん隊長のカモシカの脚に期待しているんです。知らない道をランプで一人で歩くのはなんと心細いものでしょう、1時間ほどで「竜尾見晴」に着いたころにようやく薄明るくなってきました。

塩見岳東峰にて
○北荒川岳あたりからガスが出始めました「おかしいなぁ、今日も晴れるはずなのに」前途に不安を抱えての前進です。塩見岳の登りでは横殴りの雨まで降ってきました、今日の登りはこれが最後だと必死で頑張り東峰に到着です、誰もいない寂しい山頂でした。すぐに西峰に行きますがこちらには中年ご夫婦が出発のところです、雨の中シャッターをお願いして申し訳ありませんでした。

○塩見岳の下りはガレ場で大変危険です、何がってほとんど素人の人がガラガラと石を落としながら通過するからです。挨拶も交わさない女性がすれ違いざまにいきなり頭大の岩を隊長めがけて落として来たではないですか、パラッパラッという音に敏感に反応し顔を上げた時には岩が目の前です、とっさに身体を開いて難を逃れました。「ラクッー、ラクッー」声の限りに下に危険を知らせます。下にはジグザグの道が50Mぐらい続いています、思わず血の気の引く隊長でした。よい子の皆さんは誤って落石したら大声で知らせましょうね。

○ところがこれだけでは終わりません、安全地帯ですれ違いを待っていると、突然大音響と共に大量の岩が崩れ落ちてきました、北アの大キレットでも経験したことの無いほどの凄まじい土砂の流れがゴーッという木霊を残してガスの谷に消えて行きました。「ちょっと勘弁してくれぇ」誰も巻き込まれなかったか心配です。

○塩見小屋の前は準備中の登山者で溢れかえっています、今年から完全予約制となり予約がないと泊まれません。おまけに幕営禁止です。旅館じゃあるまいし山小屋の使命を忘れたこの営業方針は納得がいきません。あの場所で小屋を営む限りに於いては開放的な営業をする義務があるのとちゃいますか?古い人間とお思いでしょうがこんな風潮を看過するわけには参りません。

○三伏峠までの道は下りだけかと勘違いしていましたが、なんと立派な登りがあったんですね、本谷山は疲れの出始めた脚には辛いものがありました。でも満開のキバナシャクナゲが疲れを忘れさせてくれました。もうここまで来れば急ぐ必要はありません、コースタイムでも余裕がありますので無理をせずに(本当は無理が利かない)ゆっくりと歩きます。

○三伏峠から塩川までの道は樹林帯の中の歩き易い道です、最近は鳥倉林道からの近道利用者が多いようですが、おかげで静かな山歩きができました。途中から天気も回復し最後はカンカン照りの河原を歩いて、ようやくバス停に到着です。熊ノ平から昼に着いたと聞いて小屋のオジサンもビックリ仰天!時間もあるので風呂を使わせてもらうが千円とはちと高すぎます。バスは小型が2台上がって来て降りた客は20人ほど、乗ったのは3人だけでした。

○駒ヶ根から中央高速バスで新宿まで帰ります、幸い1本前の16時発に空席がありラッキーでした。ところがこの最後尾の席は冷房が弱いうえにエンジンの熱が伝わってきます、更に後方からの日射が降り注ぎます、おまけにトイレの匂いが間欠的に襲ってくるとんでもない場所でした。それでもお疲れ隊長は身の不運を嘆きながらいつしか夢の世界へと誘われて行くのでした。

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