表妙義

天狗岳・相馬岳・茨尾根のピーク・鷹戻し・中之岳

茨尾根のピークから金洞山(鷹戻し、西岳、星穴岳)


裏妙義=表妙義

 

【行程】 12/20(日)快晴[松井田「妙角」7:50=妙義神社駐車場7:55−大の字8:40−見晴し台9:21−天狗岳10:10−相馬岳10:39−茨尾根のピーク11:23/11:48−鷹戻し12:35−中之岳13:46−中之岳神社下降口14:00−石門分岐手前14:10/14:40−登山口(茶店)15:05−妙義神社駐車場16:08/16:25=風呂+食事=松井田妙義IC18:35=練馬IC20:00]
【メンバー】 隊長、林道の鴉天狗、シェルパ1号

○今回は上州の奇峰の林立する妙義山に挑戦です、どうせ登るならとことん味わい尽くそうと「妙義山裏表三昧」という企画を立てました。昨日の裏妙義に引き続き第二弾として表妙義の縦走です。

○朝起きると道路が濡れているじゃありませんか、天気予報では晴れのはずなのに!夜中に気圧の谷が通過して雨が降ったのです、周りの山々の頂きも雪をかぶり白く輝いています。これはちょっとヤバイ、濡れた岩と鎖場=石鎚山の再来か?(奇しくも同じメンバーです)でも大丈夫、隊長には奥の手がありました、登山前に妙義神社で登山の安全を祈願する登山隊にはもう恐いものなしです。(ホンマかいな)

○神社からの急登が岩場の壁に突き当たるところの鎖場を上がると大の字に着きます、前方にへっぴり腰のオジサンが鎖につかまりながらヨタヨタと登っています(うーん、素人くさい)ところが我々も鎖に取り付き顔色が変わります、濡れた岩場がツルツル滑り思わず腰が引けて滑稽な格好で登るはめになりました。辻からは一般コースと別れて上級コースに足を踏み入れます。上級?果たして登山隊にそんな実力があったのでしょうか?

30Mの垂直な鎖を必死に登るシェルパ
○奥の院の右手から30メートルの垂直な鎖が始まります、その基部ではさっきのオジサンがヘルメットを着用し手にパウダーをこすり付ける等準備に余念がありません。いかにも物慣れたそのしぐさに何の準備も無い隊長は早くも不安になります。いや我々は神に守られていると無理矢理言い聞かせますが、もう少し賽銭を弾んでおけば良かったかと反省の隊長です。

○鎖に頼りながらよじ登り始めますが半分も行かないうちに手が疲れてきました、下にはシェルパの心配そうな顔が見えます。いかん鎖に頼り過ぎだ!あわててスタンスに体重をかけると嘘のように楽になりました。ここからはホールドも多く全体重を掛ける必要は無いとガイドブックにある通りです。(うん、まてよ。全体重をかける鎖って…)

裏妙義を一望のもと
○少し肝を冷やしながら稜線上の見晴台へ出ると昨日登った裏妙義の山々が一望のもとに眺められ、丁須岩がちょこんと山頂に出っ張っているのがわかります。ここからは痩せ尾根で高度感をたっぷり味わえる縦走の始まりです。大のぞきからキレットに向かって鎖につかまりながら急降下しますが、今度は天狗岳のきつい登りを返します。ここから相馬岳までは恐いところはありませんが北側斜面には昨夜降った雪が残り吹き付けてくる北風が冷たい、どうやら寒気団の南下のようです。結構はかどったので茨尾根のピークまで頑張りここで昼食とします。360度の大展望を欲しいまま、握り飯を頬張ります。(極楽じゃ)

鷹戻しを登る鴉天狗
○いよいよ本日最難所の鷹戻しにさしかかります、北斜面に掛かる鉄梯子を登ると50メートルの長い鎖の岩場です。鎖は冷たく10メートルも進むと手のひらの感覚が失われてきますが握力の限りに握り締めます。ここは全体重を鎖に掛けながら腕力だけでよじ登るオーバーハング気味の難所が何個所かあります。突然冷たい強風が隊長を岩から引き剥がそうとして襲い掛かってきます、思わず身体を岩に密着させて風の通過を待ちます、あっという間に帽子を吹き飛ばされますがなすすべもありません。(紐で結んでありますので無くなりませんが)しかし上部のナイフリッジでは身体を持ち上げようとして振られ左膝上部をしたたか岩に打ち当ててしまいました。「痛ったーい」この危機に際して隊長はシュペングラー(北壁の死闘)のモードに入り、何とか無事に通過することができました。

ルンゼ内2段25Mの鎖を降りる
○鷹戻しからは金洞山が目の前に迫り道の険しさが見て取れます、その右手には星穴岳がバットマンのお面のような面相で人の近づくのを拒否するような険阻な岩稜を見せています。鷹戻しの下りはチムニーを垂直に下降する2段の鎖です、この鎖は太いので握りにくく途中からオーバーハング状に垂れ下がっているのでスタンスが得られず振られます。恐怖心からでしょうか必要以上に力を入れてきたので握力の低下が著しく、生きた心地がしませんでした。

東岳から相馬岳を望む
○東岳から中之岳への稜線には困難な岩場の通過があります。とても登れそうも無いので他にルートを探します。まず左の巻道を試しますが20メートルで行き止まりです、つぎに右の岩場に挑戦しますが5メートルで行く手を岩に阻まれます。「しゃあない、中央突破しかないか」でも両側が切れ落ちているところを1メートルくらい上のテラスに乗らなければなりません、折りから北風は容赦無く強さを増してきます、ホールドが無いので基本中の基本の3点確保が出来ない状態で幅30センチのテラスの上に立つ勇気がなかなか湧いてこない隊長です。

○身体を空間に投げ出すようにして狭いテラスにようやく立つと、今度は身体を入れ替えて岩を攀じ登ります、しっかりしたホールドはありますがスタンスが爪先しかなく、腕力でずり上げていきます。「痛い!」さっきぶつけた膝が岩にさわっただけで、ズキーンと頭のてっぺんまで伝わる強烈な痛みに思わず目をつむる隊長でした。

○満身創痍で中之岳に着いた登山隊は西岳のコルから中之岳神社に下ります。稜線を離れると冷たい北風ともお別れで、あとはお気楽散歩モードです。ところが10分ほどしてすぐ後ろにいるはずの鴉天狗の姿が見えません。まさかこんなところで事故に遭ったのでは?危険なところはないし、でも声も掛けずに遅れるなんて我々の常識では考えられません。声の限りに呼びかけますが風の音しか返ってきません、もしかして道を間違えてそのまま強引に下ったことも考えられます、携帯のスイッチを入れ30分待ちますが連絡はありません、暗い気持ちで下山を開始します。ところが展望台の下でニヤニヤした鴉天狗の登って来る姿が、なんと下まで一回下りてしまったようです。まったく心配させやがって、まず連絡する努力が最優先でしょうが。(プンプン)

○さて無事の下山のお礼を中之岳神社でお参りしてから、妙義神社まで歩きます。妙義神社付近の旅館「玉屋」で温泉に入ってから帰ります。なんと入浴料1500円、もうヤケクソで散財です。桧造りの湯船に寒椿を入れた桶が浮かぶ高級温泉で、湯から出たら一句短冊に記す風流でした。今回は普通の山より上半身を酷使したのでいまだに筋肉痛です、岩トレをしっかりしなくてはこれ以上のグレイドは無理でしょう。(裏妙義の丁須岩は今後の課題です)

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