鳥海山
新山のピークに立つ
10月30日 東京=(車)
10月31日 =岩木山=八甲田山=八幡平=盛岡
11月01日 盛岡=早池峰=湯の台
11月02日 湯の台=鳥海山=志津温泉
11月03日 志津温泉=月山=蔵王山=東京
【行程】 11/2(月)晴れのち曇り[湯の台7:30=鳥海高原ライン終点7:50/55−滝ノ小屋8:13−河原宿小屋9:09−薊坂10:05−伏拝岳11:03−新山分岐11:20−新山12:05−分岐12:45−七高山12:50−伏拝岳13:16−昼食13:25/53−薊坂14:15−河原宿小屋14:39/45−滝ノ小屋15:14−駐車場15:25/44=酒田IC17:05=月山IC17:30=志津温泉18:15(清水屋泊り)] 【メンバー】 隊長、林道の鴉天狗、シェルパ1号
○国民宿舎「鳥海山荘」で英気を養った登山隊は今回のツアーのメインイベントである鳥海山へ挑戦します。天気は快晴ですが昼頃から弱い気圧の谷の通過が予想されています。本当は朝早く出発したいところですが、怠け登山隊は7時の朝食をとってからのスタートとなりました。テレビで昨日の荒天のなかで鳥海山に登った中高年の夫婦が下山していないとの報道があり緊張させられます。鳥海高原ラインからは青空をバックに鳥海山の大きな山容が我々を迎えてくれました、思わず歓声とため息の出る登山隊です。
○さて駐車場に着くと車が10台ほど停まっていますが、一際目立つ車が2台ありました、1台は山形県警のパトカーで、もう1台はNHKの車です。NHKの方は人が乗っていて我々に話しかけてきました。遭難者の安否は未だ不明であること、カッパとオニギリといった軽装備であったことなどがわかりました。登山隊も威張れるような重装備ではありませんが一応準冬山装備で臨んでいますので安心です。おまけに心字雪渓が迷い易いとの情報に基ずき赤布付スペシャルポールを50本を持参しています。お陰で隊長の外見は二宮金次郎(古い)ORかかちかち山のタヌキ(背中で火が燃えている)という情けない格好となっています。
○滝ノ小屋を過ぎて少しすると上から団体が下りてきました、遭難救助隊の皆さんです。ニコニコ顔で話しをしているので遭難者の安否を聞くと無事だったとのこと、本当に良かった。河原宿小屋の前でお弁当を食べる中高年カップルをやり過ごすともうあとは無人の世界です。こんなに天気が良いのにやはり鳥海山は手強いのでしょうか、はたまた遭難騒ぎで敬遠されているのでしょうか。
○心字雪渓には雪が一欠けらも残っていませんのでガレガレの岩場を登って行きます。ガイドブックにはどこを登っても良いと書いてありましたが、ガスが出ると大変迷い易く、ここで数々の遭難騒ぎがあったところです。登山隊は用意の赤布とポールなどを駆使して帰りに備えます。途中から左の尾根の中腹を巻く道に出て、沢を渡ると雪渓は終わりです。この先には薊坂が待っていますが、あざみ坂と書いた柱が転がっている所から先500メートルほどはナイロンロープが張ってあり、それに沿って歩けば迷う心配は有りません。
○ロープの切れたところから石の階段が現れます、暫くするとこの階段に氷が張りついて極めて滑り易くなっています。(約300メートル)さらに登って行くと尾根筋に出ますが風が急に強くなります。ここから緩い登りで外輪山の一角の伏拝岳に到着します。ここからの風景は一変します、目の前には雪を被ってところどころ白い新山が黒々とした山肌を見せています。強風がカルデラ内を吹き荒れていてガスと粉雪が舞い上がる岩と氷の世界が繰り広げられています。新山の麓にへばり付いたような大物忌神社も人の気配はまったく無く寒々しい風景が展開しています。思わず闘志が萎えそうになる隊長でしたが、勇気を奮い起こして前進開始です。
○外輪山をめぐると風は益々強くなり時々吹き飛ばされそうになります。つい先ほどまで明るかった空もいまでは雲がすごいスピードで流れていき、時々日本海の海岸に白い波が立つ光景が眺められる程度です。大物忌神社への道は落石のため通行禁止の看板とロープが張ってありますので七高山近くからの道を行くことにします。下降地点に着くとそこは風の通り道となっていて、下から吹き上げる地吹雪のような強風が襲ってきます、まるで我々の下降を拒否するようです。地面は凍った雪で覆われ時折鎖が顔を出していてようやく道がわかります。息を詰めながら風に飛ばされない様に慎重に下り始めましたが、10メートルほどで行き詰まりアイゼンを装着することにしました。
○赤布を鎖の露出部分に括り付けながら下降して行きます、鞍部からは赤布付きポールをストックで開けた穴に埋め込みながら前進します。いよいよ新山の登りに掛かりますがこちらは大岩が重なり合ったところでピークが3つあり、どこが頂上か判別が付きません。それらしいピークに取り付きますが途中で向こうの方が高いと思い転進します。直接は登れませんので裏から登ろうと巻いてきますと、風下で雪の着いていない岩に白い矢印があり進路の正しさが証明されました。(思わずほっとする隊長でした)
○凍り付いた滑りやすい斜めのスラブ状の道をアイゼンとストックで必死に辿り、最後は大岩の積み重なったピークを裏から強引に上り切ります。なんとそこには山頂の名札が置いてありました。やったー、本当に辛い登頂でしたので、感激もひとしおです。鼻水を垂らしながら写真を撮り下山に移ります。暫くはアイゼンの跡を辿れましたが、途中でわからなくなりました。少し右に行き過ぎたかと思っていたところ、鴉天狗からも同様の指摘がありコースを修正します。そのとき一瞬ガスが流れ大物忌神社が左下方に見えました。なんと知らないうちに大きく右に行き過ぎてしまっていたのでした、危ない危ない。
○鞍部まで戻ると往に立てたポールに出会い一安心です、慎重に方向を見定め鎖場へと向かいます。後ろからの風に押されるように鎖のついた氷壁を攀じ登り、ようやく外輪山に戻りました。風は益々強くなっていてまともに立っていることが出来ません、アイゼンとストックで3点確保の状態で身を縮めてやり過ごします。ここまできたら七高山の三角点もと欲張りましたが、何度も外輪山の縁から吹き飛ばされそうになりながらたどり着くありさまです。(登山隊の強風記録の更新でした)
○伏拝岳の手前でアイゼンをはずし、強風をさけて尾根から下りたところで遅い昼食とします。夏山ルートは速いペースで消化してきましたが新山の往復にはたっぷり時間がかかりました。恐るべし、岩と雪の鳥海山でした。心字雪渓の下りは幸いガスに巻かれること無く河原宿小屋を目視しながら気楽に下りることが出来ました、しかし備え有れば憂い無し、本当に良い教訓になりました。
○駐車場に着くともう車は我々のものだけでした、ほとんどが遭難救助隊の方々の車だった様です。クールダウンを終えた登山隊は今宵の宿の月山志津温泉へと向かいます。今夜は清水屋旅館のシーズン限定きのこづくしスペシャルです。食べきれないほどのきのこづくし+きのこご飯+際目つけはきのこ芋煮です。(お酒も1本付いてこれで8500円とは信じられません)満足満腹な登山隊は厳しかった行程の垢を温泉で落とし明日への新たな闘志を漲らせるのでした。