五竜岳・鹿島槍ヶ岳

五竜岳・鹿島槍ヶ岳・爺ヶ岳

五竜岳から鹿島槍ヶ岳


【行程】 8/28(金)曇りのち雨[新宿22:35=(アルピコバス)=]
8/29(土)
雨のち晴れ[=五竜とおみ6:20/7:07=(テレキャビン)=アルプス平7:15/7:30−見返り坂8:00−西遠見9:55−五竜山荘11:05−五竜岳11:55/12:25−G512:55−北尾根の頭13:45−キレット小屋14:49(泊り)]
8/30(日)
曇り時々雨[キレット小屋6:02−鹿島槍ヶ岳北峰7:21−鹿島槍ヶ岳南峰7:51/8:08−冷池山荘9:10−爺ガ岳中峰10:13/10:50−種池山荘11:25−ケルン12:38−扇沢出合13:20/13:32−扇沢13:40/14:00=(松本電鉄バス)=大町14:40/16:10=(松本電鉄急行バス)=長野17:15/17:21=(新幹線)=東京19:04]
【メンバー】 隊長、林道の鴉天狗

○今回の山行は9月の槍、穂高にむけてのステップアップの性格を持たせました。すなわち(1)軽量カモシカ山行(2)岩場の通過、の2点です。(1)は総重量を8キロ以内に制限してコースタイムを大幅に短縮しロングコースを歩きます。(2)は八峰キレットの通過時に出来るだけ鎖の使用を避け3点確保の練習をします。(まだ命が惜しいのでハシゴは積極的に使用します)

○台風4号が接近する中、中央線が不通という情報が入り急遽バスに切り替えて五竜へと向かうのでした。サウナ風呂のように蒸し暑い新宿駅に集合してみれば、シェルパの影も形も無い?その時、隊長の携帯に不参加の連絡が入ります。うーん、まいったな。(隊長は絶句!)高速に乗るや否や、嵐のような激しい雨脚が容赦なくフロントガラスに叩き付けてきます。そこへ添乗員の挨拶が追い討ちを掛けます。「北アルプスは本日は大雨です、明日も期待できません」「なんと本日のお客様は13名です…」余計なことをわざわざ言いお客を不安な気持ちにさせる不吉なバスでした。

○ただこのバスの利点は五竜とおみのテレキャビン乗り場まで直通というところです。本日のテレキャビンのお客は4名のみ、小雨の中ゆっくりと乗り込みます。暫くすると相棒の絶叫が!何事かと思いきや、隊長も続けて叫ぶはめになりました。なんとシートは水浸しじゃありませんか、山に登る前にパンツまでビショビショに濡れてしまいました。毛布のない冷房利き過ぎバスで十分に腹の冷えた隊長はアルプス平のトイレに駆け込みました。(みなさん気を付けましょう)

○小雨のなか遠見尾根をひたすら登って行きます、やがて雨はあがりましたがガスで展望は利きません、五竜目指して汗をかいていくと、あっけなく縦走路に出てしまいました、これぞ軽量化の勝利です。(地図読みがへたとの陰の声あり。高度計、GPSが欲しいとの負けず嫌いの声もあります)ちょうど唐松岳がガスの間から顔を出し始め、すぐ下には五竜山荘が赤い屋根を見せています。ようやくアルプスらしい雰囲気になってきました。(思わず顔がほころぶ隊長です)

○五竜岳への登りはちょっとガレていますが歩き易い道です。(キレットに比べて=あたりまえか)山頂に着くと鹿島槍がその秀麗な双子峰で我々を迎えてくれ、疲れも一気に吹っ飛びました。昼食の間に剣、立山も顔を出し、この贅沢な展望を2人占めしました。明日は天候の悪化が予想されますので目一杯楽しみます。

○キレット小屋まではザレた道を下ってからは、痩せた稜線上の道を小さな瘤を丁寧に越えて行きます。ハシゴ、鎖が要所要所にありますが、鎖は使わなくても何とかなりました。おりからのガスで高度感が薄れたせいでしょうか、恐いところはありませんでした。疲れた足を引きずってようやくキレット小屋に着くと待っていたように雨が降り出しました。(我ながらなんと悪運の強い奴でしょうか)

○しかし8月の北アルプスというのに5人しか会いませんでした、本当に静かな山旅が楽しめました。キレット小屋に着いて昼寝の後で食堂に下りてビックリ仰天、何とお客は我々2人だけです。新しい小屋を2人占めとは、まったく本日限りの贅沢でした。大雨で中央線が不通、かつ燕で雷に打たれて死者が出た日に雷注意報が出ているにも係わらずに、山へ向かう馬鹿者は居ないはずです。(さすがに能天気の隊長も雷は恐いのです、ジェト機の音に脅えながら歩きました)

○さて翌日、心配していた天気は幸いなことになんとか小雨程度です。台風に引き寄せられるように前線が南下したままのせいです。雨が降ったためでしょうか、お客が少ないせいでしょうか、水はもらい放題でした。2.5Lの水を背負っていざ出発です。(軽量化はどうしたんじゃい、まったく)

キレット小屋を見下ろす
○八峰キレットは小屋からいきなりのハシゴ登りです、昨日と違い雨に濡れた岩場はさすがに緊張します。しかし隊長は「3点確保は基本中の基本」と心の中で繰り返しながら果敢にアタック、順調に岩をクリアして行きます。いよいよ八峰キレットの核心部に差し掛かった時に事件は起きました。隊長がトラバースしようと左手でホールドを深く掴んだ瞬間、ブニュッというなんとも気味の悪い感触が薬指の先にありました。なんとホールドの奥に親指ほどもある大きなヒルが隠れていたのでした。「ヒェ〜!」思わず手を放しそうになる隊長でしたが、なんとか踏みとどまり、他の3点が確保されているのを確認のうえやっと左手を放すことができました。オー気色悪い、あのブヨブヨした感触がいまでも左薬指の先に残っています。もう、いやっ!それからの隊長のホールドは残念ながら浅いものになってしまいました。(ヒル嫌いの隊長のお粗末でした)

鹿島槍ヶ岳北峰にて
○鹿島槍ヶ岳の北峰はガスでなにも見えませんでしたが、南峰では出発間際に剣岳がガスの間から姿を現しました。(ラッキーでした)ここからは稜線漫歩のらくちんコースです。時々雨がぱらつきますが、全然気になりません。爺ガ岳の山頂で昼食にしましたが、この間だけ雨があがり薄曇りとなる幸運に恵まれた登山隊でした。でも登山者が極端にすくないので、冷池山荘、種池山荘ともアルバイトの若い人達が手持ちぶさたで暇そうにしていました。

○もみじ坂を下りようやく扇沢出合に着くと、そこには昔あったバス停の影も形もないではないですか。無情にも大町行きのバスは手を上げる我々を無視して通過して行きました。(クソッ松電バスめ)しかたなく扇沢まで重い足を引き摺ります。さて大町に着いてみればJR中央線は不通とのこと、松本から新宿へ行くバスも最終まで満席です。途方に暮れる登山隊に一筋の光明が、長野まで急行バスで出て新幹線で東京に帰るルートが残されていました。JR、松本電鉄、日本食堂の対応の悪さにキレそうになりながらヤケ酒をくらって帰る隊長でした。

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