北アルプス

(西銀座〜裏銀座)

薬師岳・黒部五郎岳・三俣蓮華岳

鷲羽岳・黒岳・野口五郎岳・烏帽子岳

薬師岳


8/5 池袋=
8/6 =富山=折立−太郎平小屋=薬師岳往復
8/7 太郎平小屋−黒部五郎岳−三俣蓮華岳−三俣山荘
8/8 三俣山荘−鷲羽岳−水晶小屋=黒岳往復−野口五郎岳−烏帽子小屋=烏帽子岳往復
8/9 烏帽子小屋−高瀬ダム=大町=南小谷=小谷温泉
8/10小谷温泉=登山口−雨飾山−雨飾温泉−山口=根知=新宿


【行程】 8/5(水)曇り[池袋23:55=(西武バス)]
8/6(木)
晴れのち雨[=富山5:35/6:15=(富山地鉄バス)=折立8:47/9:00−三角点10:05−太郎平小屋11:50−薬師岳山荘13:10−薬師岳13:52−薬師岳山荘14:30−太郎平小屋15:30(泊り)]
8/7(金)
雷雨のち晴れ[太郎平小屋6:48−神岡新道分岐8:08−黒部五郎の肩10:17−黒部五郎岳10:34/10:54−2560ピーク11:30/12:03−黒部五郎小舎12:40−三俣蓮華岳14:15/14:37−三俣山荘15:02(泊り)]
8/8(土)
快晴[三俣山荘5:35−鷲羽岳6:23/6:37−ワリモ岳7:04−水晶小屋7:45−黒岳8:10/8:41−水晶小屋9:01−真砂岳分岐10:21−野口五郎岳10:55/11:15−烏帽子小屋12:50/13:20−烏帽子岳13:55−ニセ烏帽子岳14:25/14:35−烏帽子小屋14:48(泊り)]
8/9(日)
快晴[烏帽子小屋6:05−タヌキ岩6:35−濁沢水場7:45−高瀬ダム8:05/8:25=(タクシー)=薬師の湯8:50/10:06=(タクシー)=信濃大町10:30/13:31=雨飾山へ]
【メンバー】 隊長(単独行)

○池袋から夜行バスで富山駅前に着き、駅のコンビニで朝食と昼食を買い、予約してある折立行きのバスに乗り込みます。ここでまず計量です、(10Kg超は荷物料金650円)単独行ということもあり、予備の食料そのた諸々で12Kgとなってしまいました。ところが「朝食は抜いたか?」と聞かれました。はじめは何を言っているのか分かりませんでしたが、「どっか見えないところで軽くして」とダメを押されてようやく気づく鈍い隊長でした。もう朝食は手に持っていたので、カメラほか2Kgほどを手早く抜き、目出度く計量にパスしました。それにしても親切な富山地鉄のおじさんです。

○バスは順調に折立に到着しましたが、すでに8時50分です。太郎平の到着時間によっては本日の宿泊地を薬師岳山荘にする必要もあります。折立からの登りはいきなり急登で先が思いやられたが、意外と足は前に出ます。(確かな手応え)自然体でペースを守ってグングン高度を稼いで行くと、あっという間に1870Mの三角点に到着しました。ここからは距離は長いがゆるやかな尾根上のプロムナードです、太郎平まで2Kのベンチで薬師岳を眺めながら昼食とします。

○太郎平小屋には12時前に到着しましたので、ここから薬師岳をピストンすることにします。折立からのコースタイム5時間はキスリング時代のものです、途中で食事をしても2時間50分でした。小屋の受付のお嬢さんに聞くと薬師岳の往復は5時間とのこと、夕食には間に合うので必要なものだけ持って出発します。コンビニ袋に雨具、水、食料等をつめて「いってきまーす」、するとお嬢さんが後ろから声を掛けます「お客さん、ナップザック貸してあげるよ」、お言葉に甘えて拝借することにします。しかし受付のお嬢さん達には近くに買い物に行くスタイルだと、散々笑われてしまいました。軽量化のためサブザックを置いてきたダメな隊長でした。

誰もいない薬師岳山頂にて
○薬師峠まで下ると今度は沢添いの登りとなります。沢の源頭は水が湧き出ており、冷たくておいしい水が得られます。薬師平からはザレた道を一気に登って行きますが、薬師岳山荘に着くころにガスが出はじめました。薬師岳の山頂はあいにくガスで展望が利きませんでしたが、誰もいない静かな時を過ごすことが出来ました。ところが水場まで下ったところで大雨が降り出しました、小屋までの20分間は雨中の行軍となりましたが、ちゃんと雨具を持っているのでなんの心配もありません。でも薬師峠からの登り返しの長く感じたことといったら、道を間違えたかと思うほどでした。

○昨日からの雨は夜半から激しさを増し、断続的に叩き付けるように小屋に襲いかかって来ます。おまけに明け方から雷が発生し、とても出発できる状態ではありません。朝食のあとで何もせずボウッとしていると、折立からのバスが不通になる可能性がある、薬師沢は膝上までの徒渉とか放送しています。(この後すぐに腰まで増水し通行禁止となりました)しばらくすると雨は引き続き激しく降り続いていますが雷は止まったようです。ぼちぼち黒部五郎方面にも出発する人が出始めたので、隊長も重い腰を上げます。雨そのものは最近の雨具のお陰で恐くないのですが、道を間違えないかと不安です。

○北の俣岳への登りは濁流のようになった道を進みます。稜線に出ると西からの強風が雨を運んできてバチバチと身体の右半分に襲い掛かってきます。前方から2人連れが来ました、黒部五郎小舎からにしてはやけに速いと思ったら、なんと引き返してきたのでした。うーむ、隊長は前途に不安を抱きながら前進します。さらにまた1名青ざめた顔の単独行が引き返して来ます。もはやこれまでか?と思ったところで稜線の東側にでました、ここは風が弱いので休憩とします。ここで後ろから昨日小屋で隣になった単独行氏が追いついてきました、先行していたはずなのに?途中の岩陰で風雨を避けていたら、隊長の姿が見えたので追いかけてきたそうです。お互いの健闘をたたえあい先に進みます。

稜線から黒部五郎岳を振返る
○やがて黒部五郎岳の登りにかかります、ザレたジグザグの急登です。雨は小降りになりましたが、ガスのなか相変わらず風は強い。前方の3人パーティを目標に頑張って登って行くと、急速に接近し追い抜いてしまう。(バテたようです)さらにコンスタントに足を出して行くと、あっけなく黒部五郎の肩に到着しました。ここから山頂はひと頑張りです。黒部五郎岳の山頂で天候の回復を待ちますが本格回復にはもう少し時間がかかりそうなので、諦めて稜線上の道を進みます。天気は徐々に回復し雲の平、黒部五郎などが望めるようになってきたので、2560Mピークで昼食とします。やがて三俣蓮華岳、鷲羽岳などが前方に眺められるようになり青空が広がってきました。

水晶岳と鷲羽岳
○黒部五郎小舎への下りは最後に沢の中を行くが、もう水は引いていたので簡単に降りられました。小舎から三俣蓮華岳への登りは暑い中の急登でこたえます、汗がポタポタとしたたりおちます。しかし稜線に出ると涼風と素晴らしい展望が疲れを癒してくれました。黒部五郎岳と薬師岳がその大きな山容を青空をバックに現しています。ここからは尾根上のハイマツの中の快適な登りです、ひと汗かくと三俣蓮華岳の山頂です。最後の頑張りで山頂に立つと、何と槍ガ岳、穂高岳、常念岳、大天井岳等が迎えてくれました。突然の展望の展開に驚愕の隊長です、感動にしばし声もでませんでした。

○三俣山荘は交通の要所にあるだけに混雑しています、でも最後には布団1枚に1人で寝られました。山荘の2階の食堂からは槍、穂高が一望のもとに、後ろの窓からは鷲羽、水晶が眺められる、本当に贅沢な展望です。隊長は生ビールの看板に引き寄せられるように食堂の扉をくぐりましたが、機械の故障で生は手に入りませんでした。(ウーン残念じゃ)山荘の前の広場ではヘリコプターが何度も発着し、ここ数日間雨で滞っていた荷揚げを一気に進めていました。そう言えば昨日の太郎平小屋のオカズは寂しかったが、きっと雨で荷揚げが出来なかったせいでしょう。本日のメニューはチキンソティでなかなかおいしかったので○です。ただここの水はなんだかカビ臭くてお勧めできません。(隊長はこの水に2日間悩まされました)

ピンクに染まる槍ヶ岳
○夕食後は外へ出て、暮れ行きて薄くピンク色に染まる槍、穂高に見とれていましたが、風が冷たく早々に小屋に入りました。大陸の高気圧からの冷たい風が入ってきているようです。なんと今どき梅雨前線が南下したための雷雨と晴天だったそうです。今年の天候は本当に不順です、しかし明日も晴れて欲しいと祈りを捧げる隊長でした。

○いよいよ本日は後半の核心部分に迫ります、天気は良いが冷たい風が強く吹いています。まず小屋の前に立ちはだかる鷲羽岳に向かいます。ザレた道を一気に高度を上げていきます、はるか前方に見えていた女性3人組に追いついたところで、あまりの寒さにカッパを着用します。すると後方からヒタヒタと迫ってくる影がひとつ、遂に隊長はスニーカー男に追い抜かれてしまった。(ショック!)なんとか追いすがるがその差は一向に縮まらない、ハアハア、ゼイゼイ言いながら山頂に倒れ込んだ隊長でした。やはり若者にはかなわない、ちょっと寂しい現実です。

○鷲羽岳からの展望は期待を裏切らない素晴らしいものでした。360度の大展望が朝の澄んだ大気のもと繰り広げられています、富士山までがくっきりとその秀麗な姿を見せているのには驚きました。隊長はゆっくりとこの眺めを網膜に焼き付けてから黒岳へと向かいます。ワリモ岳の登り返しは予想外に厳しかったけれど、まだ朝のうちなので余裕で登ってしまいました。回復の早い隊長でした。(まだ若い?)

○水晶小屋は小さな小屋です。水は分けてもらえませんがミネラルウオーター500mlを500円で売っています。ここにザックをデポして黒岳に向かいます。空身に近いのでペースは上がります、山頂付近は岩場ですが鎖があるわけでもなくストックを使用し続けても何の問題もありません。山頂からの展望は鷲羽岳からのものと似ていますが、より山が深いという感じがします。ちょうど立山、剣岳が雲の間から顔を出して我々に挨拶してくれました。剣岳はちょっと自信が無かったのですが、帰りに水晶小屋のオヤジサンに確認して同定しました。また野口五郎岳が角度を変えて大きな山容を見せているのが印象的でした。

○水晶小屋から真砂岳へは、痩せ尾根をアップダウンを繰り返しながら下ります。湯俣の分岐からは真砂岳、野口五郎岳の西側を巻いて鞍部から登り直します。こんもりとした草木の無いザレた山頂は、それなりに立派ですが印象は薄い感じです。(まあ新御三家と同じ名前でしたので子供には受けましたが)ここからは今まで登ってきた薬師岳、黒部五郎岳、鷲羽岳、黒岳の展望を欲しいままにすると共に、反対側には餓鬼岳が黒々とした山容を見せていたのが今までに無い景観でした。

○ここに学生4人パーティの登場です。目のくりくりっとしたかわいい女の子が「隊長」と呼ばれていました。思わず「僕も隊長です」と話し掛けるアホなオジサンでした。彼らは雨のなか餓鬼岳を登り、槍ヶ岳を経由しての大縦走だそうです。でもさすがに元気いっぱい、こぼれんばかりの笑顔の写真のシャッターを押してあげる隊長でした。(二十数年前を思い出しつつ…)

○烏帽子山荘へ向かって下って行くと、そろそろ朝に高瀬ダムを出た人の先頭が登ってきます。聞けば烏帽子小屋は週末で混むので、早い到着の人には野口五郎小屋まで行くようにと勧められたようです。これは大変、急がねば、隊長の足の加速装置がONになりました。またハアハア言いながら小屋までの最後の登りをダッシュしました。小屋はやはり混んでいて、布団1つに2人でした。水は1リットル200円で分けてくれます。

○荷物を置いて烏帽子岳ピストンです。天気は良いしお散歩モードですが途中でどっかの旅行社の団体に追いつきました。20数名でしょうか、リーダーの資質が低いので登山道に大渋滞を引き起こしていました。まったく困ったものです、参加者もまったくの素人だけではないのだから、少し教育して道を譲る工夫が必要でしょう。もう少し気配りを大切にしないと、旅行社の名前に傷がつきますよ。隊長はちょっと気が咎めましたが、登山道の脇を追い抜かさせてもらいました、この団体が烏帽子岳を登るのに付き合っていたら陽が暮れてしまいます。

烏帽子岳
○烏帽子岳の登りは最後の50Mにナイロンロープが固定されています。ここからは安全のために両手をフリーにした方が良いのです、よけいなお節介ですが回りのオジサン、オバサンに注意を与えて、ストックその他の手荷物を置いて行くようにアドバイスする隊長です。さて、頂上の最後のロープを登ると岩の間から向こう側に顔を出せます、左の1枚岩がピークですがあと2M届きません。慎重かつ強引に腕力で80Cmぐらい岩を攀じ登り、1枚岩の上部に出ますが、ここは風が強く足が竦み前進不能です。しかたがないので岩にしがみ付きながらイモ虫のように這い上がり、山頂にタッチ。岩トレもしていないし命も惜しいので、まあこの辺で満足しておきましょう。(ああ、恐かった、夢に出てきてうなされそうです)

○小屋に帰ってからは、ビールを片手に赤牛岳の勇姿を肴にしてゆったりとした時を過ごします。少々寒くなり小屋に入ると隣のオジサン3人組と酒盛りが始まります。そこへ反対隣の人が現れるが、これがなんと太郎平小屋で隣だった単独行氏でした。楽しかった山行を振り返り話しが盛り上がり、また単独行者としていろいろ得ることの多い内容充実の話しも聞くことができました。このあたりは単独小屋泊りのメリットでしょうか。

○今日は烏帽子小屋から高瀬ダムへブナ立尾根の下りです。小屋を最後の方に出た気力充実の隊長はどんどん先行者を追い抜いて下ります。朝のうちの涼しい時間でしたのでそんなに暑くなかったのですが、登ってくる人々は大変そうでした。途中で36人の団体とすれ違いましたがマナーの良いのに驚きました。個人個人は慎み深いのに団体となると我が物顔に厚顔無恥の振る舞いが目に付くというのは情けない現状です。自分達がどういう影響を他人に与えているのかを考えられる感性をもった人々の集合でありたいものです。あまり団体は好きになれないのですが、ここで会った人達のように感性豊かであれば共存も十分可能でしょう。

○濁沢の仮設橋のところで昨日野口五郎岳で会った学生さんに追いつきました。大きな荷物を背負ったまま前方から渡ってくる人々を待っていました。なかなか人が途切れないので5分ほど話しを交わしましたが実に爽やかな青年たちでした。いざ渡る番になったら、「私たちは荷物が大きいのでお先にどうぞ」と譲ってくれるではないですか。(今時の若者は素晴らしい!)日本の将来も捨てたものではないなと思いました。それに引き換え今時の中高年登山者はと思わずにはいられません。(自戒を込めて)しかし、この橋が3日後に濁流に流され1人行方不明になるとは、つくづく自然の力の恐ろしさを感じます。

○高瀬ダムでは心配していたタクシーが4台も客待ちしていました。しかし一人で8000円も払えるサイフを持ち合わせておりませんので、相乗り客を待ちます。その間に本日の宿の予約を公衆電話から行ないます。山の中で予備日を消化しなかったので明日「雨飾山」に登ることにして、小谷温泉に泊まります。ダムサイトにピンク電話がありますが10円玉のみ使用できますのでタクシーを呼ぶときは10円玉の用意が必要です。相乗りの3人組と薬師の湯に寄り(500円)すっかり山の垢を落として大町に出ました。

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