白馬岳
ロープウエイ駅から白馬三山
【行程】 6/27(土)雨 [新宿23:50=(急行アルプス)=白馬5:36/6:05(タクシー)=猿倉6:20/6:52−白馬尻7:55−葱平−避難小屋10:30/11:00−白馬山荘12:05(泊り)]
6/28(日)雨のち晴れ [白馬山荘7:00−白馬岳7:15−三国境7:41−小蓮華山8:14−白馬大池9:22−乗鞍岳9:45/10:00−天狗原10:35−自然園まで30分ベンチ10:55/11:26−ロープウェイ駅11:50/12:00=栂池高原12:32/13:00(バス)=白馬13:23/15:04=(スーパーあずさ10)=新宿18:36]【メンバー】 隊長(単独行)
○今回は7月の連休に行く南アの訓練(夜行で行って1500M以上の登り。3000Mの高度順応のため2900M以上に1泊する)を兼ねて挑戦する山を物色していましたところ、MMLの報告に刺激を受け白馬岳に決定しました。なんといってもお花が見頃で、WCジャマイカ戦のため空いているとの読みもありました。
○確かに人は少なかった。白馬で降りたのは13人だけ。いつまでたっても来ないバスに見切りをつけ、タクシー相乗りで猿倉へと向かいます。しかし、このタクシーの運転手はなんだ!のっけから「昨日大捜索救助があったんです」ときた。鑓温泉に降りた登山者が行方不明とのこと。フムフムこのルートは未だ整備がされていないはず。まあそういうことか、とひとりで納得していると。次に栂池から登った人が4日間食料も無く山の中を彷徨したとのこと。う〜ん、ワシが降りるルートやないか、不安やな。とどめは「大雪渓で昨年落石に当たって死人がでた」ですって。なんじゃ、この陰気な話は!これから山に登ろうという人に向かって縁起でもない。隊長は怒り(恐怖?)に震えたのでした。
○初めての大雪渓はガスと雨の中の登りでした。軽アイゼン(6本)を装着して軽やかなリズムでピッチを上げます。先発の人々はノーアイゼンでツルツルとスリップしながら難儀しています。熊坂さんの飯豊連峰石転び沢遭難救助報告を読んだ隊長は、「小屋で4本爪を1000円で売っていたのに、こんなところでケチッて命を懸ける気には到底なりません」左前方からはガスの中で落石の音がひっきりなしに聞えてきます。そこかしこに岩が落ちている、雪渓上の落石は音が聞えないから前方に細心の注意を払いながら進みます。ウム首が凝ったし足に力が入らないし、やはり急な上りは下を向いて歩きたい。
○ベンガラに導かれて登って行くと、やがて岩場の葱平に着きます。ここでアイゼンをはずしますが、今度は普通の歩きかたに違和感を感じてしまう。黄色のペンキの通りに左方向に登ると正面の岩に小雪渓と右に矢印が出る。ここで小雪渓をトラバースすると避難小屋に出ます。黄色ペンキを見落として右手の方に雪渓を登ると危険な急登となり、さらに右に行くと三号雪渓に入ってしまうので注意がいります。
○避難小屋からはお花畑のなかのザレた道の急な登りだ、あいにく雨が強くなり風も出始めた。本当はゆっくりと歩きたい道だが羽生丈二が乗り移ってチョモランマモードで白馬山荘を目指す隊長でした。村営山荘の水場で家で待つ娘のためにおいしい雪解け水を汲んだのでザックは1キロ重くなりました。稜線に出ると突風が容赦無く雨を叩き付けてきます、でもペースは落ちません。エベレスト南西壁、冬季、単独、無酸素と念仏を唱えながら、ようやく白馬山荘に到着、1番のりです。
○山小屋は空いていました、お客は20人ぐらいで従業員の方が多いぐらいです、6畳の個室を1人で占領です。(布団は6枚なのに枕は20個ある、最盛期の混雑が忍ばれます)またオカズの豊富さに感激、加えておでん食べ放題、これで8500円は高くない。夏のピークでもこのレベルを維持してほしいものです。(カレーだけとかは嫌ですね)隣のオジサンと大門沢小屋、農鳥小屋のオカズのプアーさで話が弾みます。
○朝を迎えても奇跡は起こらず、外は嵐です。梅雨前線は中部山岳を横断しています。前日タクシーに相乗りのアベックと共に暴風雨の中を山頂へ向かいます。これこれお嬢さん、そんなに飛ばすとオジサンは付いていけませんよ、ところが5分後にはお嬢さんはバテバテでケルンにザックを置いてのピストンとなりました。最初から隊長に任せてもらえば、歩き出しは亀、気が付けば兎さん(みんなニコニコ登頂モード)で引っ張りあげてあげたのに。山頂で2人に別れを告げ、隊長は1人で白馬大池を目指すのでした。(こんな天気のなかで大雪渓を下るリスクは負いたくないと考える隊長でした)
○途中、コマクサあり雷鳥ありで雨の中でも楽しい稜線歩きでした。雷鳥は羽が生え変わっているところで、まだ少し白い羽が残っています。ガスのなかでヨチヨチ足元から現れた時には思わず歓声をあげてしまいました。彼女?もそれに応えて、ギェエーと一声あげて逃げて行きました。
○小蓮華岳を越えて下っていると突然ガスが流れ、眼下に蒼い白馬大池と赤い小屋が望めました。ここから天気は急速に回復し、乗鞍岳からは朝日岳、雪倉岳が、反対側には雨飾山が次なる山として名乗りをあげています。白馬岳はまだ雲のなかでその姿を現しません。残念ながら私には剣岳は微笑みかけてくれませんでしたが、「20数年前に登ったからいいか」と拗ねる隊長でした。
○乗鞍岳の下りの雪渓のトラバースはロープが張ってあり、それを頼りに滑り降ります、やがて天狗の庭が眼下に広がってきます、なんと気持ちの良いところでしょう。さらに下るともうすぐ栂池自然園です、ここまで羽生モードで下ってきたので時間が大幅に余りました。あと30分の表示のベンチでゆっくりラーメン+コーヒーの昼食とします。
○そこへ元気の良いオバサンがお疲れ気味の中年数名を引き連れて登場です。「上からですか、どのくらいかかりました?」「7時にでたから4時間ですよ」「それじゃ私たちは登りだから5時間ね、5時には白馬山荘に着けるわよ皆さん」隊長はチョウたまげる(ほんとかよ、こちとら羽生モードだぜ、それに残りの皆さんは元気ないみたい)「途中に白馬大池小屋がありますから様子をみていってください」とのアドバイスが精一杯のところか。一瞬ホッとした空気がお疲れ組みから流れる、ところが「そんなところで泊まったらご来光が拝めないじゃない」との一言を残してオバサンは去っていった。果たして白馬山荘に着けたのでしょうか?
○さてロープウェイの駅からは白馬三山がくっきりと見えます。隊長は一言「天気の回復が半日遅かったな」と呟く。ゴンドラの中からは唐松、五竜、鹿島槍、爺、と後立山の峰々が連なっているのが眺められます。出鱈目な山名を同定している人に少々いらだっていると、乗務員がここぞと乗り出してきて、手際良く訂正しつつイニシアチブをとり安心しました。
○電車の1時間半も前に白馬駅に着いたので、生ビールのある店を慎重に物色し、土産物屋の2階にある「パラダイス」に決めます。店に入るとなんと客はゼロ、窓際の特等席に陣取り、野沢菜をつまみにジョッキを傾けます。眼前に聳え立つ五竜岳、「そうかお前だったのか、俺を呼んでいたのは!」隊長は次なる山からのメッセージをしかと心に受け止めました。ところで2階の窓からうまそうにビールを飲む姿につられてたちまち店は満席となりました。動く広告塔の威力は絶大でした、恐るべし。(少しは料金まけてくれてもいいんじゃない)