笈ヶ岳

冬瓜山の下りから笈ヶ岳を望む


5/3(火) 野伏ヶ岳 
   4(水) 猿ヶ馬場山  
   5(木) 笈ヶ岳 
   6(金) 金剛堂山


【行程】 5/5(木)快晴 [白山自然保護センター4:58−野猿の広場5:22−大岩6:30−冬瓜平分岐8:37−冬瓜山9:13−シリタカ山9:54−県境稜線10:37−笈ヶ岳11:19/11:56−シリタカ山13:00−冬瓜山13:34−大岩15:15−野猿の広場16:05−駐車場16:31/17:00=(車)=道の駅上平18:45(泊り)]
【メンバー】 隊長、林道の鴉天狗




○200名山のうち最難関といわれている笈ヶ岳は、白山北方の豪雪地帯にあり石川・岐阜・富山の県境に位置します。この山には明確な夏道がありません。それでも夏山ハイカーに拘る隊長は、一昨年の秋に大笠山から藪を漕いで南下し、敗退した苦い思い出があります。最近では清水谷から登った記録も散見されるようになりましたが、この山の王道は何と言っても残雪期の日帰り登山でしょう。

○前夜は隣の75歳のジイサンに絡まれて深酒&睡眠不足です。昨晩は4時半出発なんて豪語していたのに起きても来ない。我々は予定通り5時に出発です。薄明りのなか遊歩道を進み、トンネルを2つ抜け沢を渡ると、観察小屋のある野猿の広場です。ここで水量の増した沢を飛び石伝いに越え、つぎに雪渓をロープに掴まってよじ登ります。

○ここから急登が続きますが道はそれほど悪くなく、危険個所にはロープが張られていますから恐怖は感じられません。ところが汗びっしょりで激登しているうちに非常に気分が悪くなり・・・アワヤ戻しそう(こんなの初めて)昨日までの疲労と睡眠不足+極度の緊張+冬山装備の暑さでしょうか??こんなヘッポコ体調で厳しい山を登れるのでしょうか・・・不安は高まります。

冬瓜山のナイフリッジ○大岩を越えた所で若者たちに追い抜かれ、ついには隣の出遅れ75歳にも抜かれるあり様です(悲しい〜)数々の記録を打ち立てた栄光の登山隊も、今では単なるミーハー隊に成り下がってしまったのか?それでも一定のペースを保っていると3組ほどは抜き返すことができました。

○雪が現れてくると足取りは益々重くなります。幸い気温が高いので雪面は軟らかくキックステップで十分です。先行者のトレースを外さないよう時々藪を分けながら稜線を進みます。ところが土が出ていると踏跡が消えて、古いトレースに引き込まれてしまいます。一度は雪庇の下の割れ目に誘い込まれ、登り返すことが難しくなってしまいました。ここで鴉天狗がピッケルを雪庇に刺し身体を持ち上げて脱出です・・・隊長はストックで引き上げてもらいました(情けなぁ〜)

○冬瓜平分岐にはテントが1張。一筋のトレースが下っていますが、残りは全て冬瓜山を目指しています。この雪なら狭い稜線でも危険は少なそうなので我々も大勢に従いましょう。しばらく行くと雪は無くなりロープのある岩場の急登です「これじゃまるで西上州だぁ」嬉しい雄叫びを上げながら、小ピークを越えて登り切ったところが雪のナイフリッジです。

○幅30Cmに満たない狭いリッジを踏み外さないように慎重に渡ります『落ちたら助からんなぁ』そんなことを考えるとビビリます。リッジを越えたところが冬瓜山でした。青空が広がり雪の稜線が鮮やかです。左奥に笈ヶ岳の山頂が望まれますが、遥かな頂はまだまだ遠い。息を整え感傷に耽っていると、後ろで相棒が「写真、写真」と騒いでいますが、隊長にそんな余力はございません。

山頂まであと一息○冬瓜山の下りは急斜面なので気を引き締めて慎重に踵で雪を蹴ります。コルで広い尾根となりシリタカ山へと登り返します。もうこの辺りから思ったように脚が上がらなくなり、見渡せる稜線が逆効果となって、いつまでたっても山頂が近づきません。

○シリタカ山から大きく下って県境稜線に登り返します。藪が出るコーナーを回りトラバースすると県境稜線です。そこから3つ目のピークが山頂です。息が上がって苦しい登りが続き、容赦なく照りつける5月の太陽は咽喉に渇きを呼びます。ダブルストックに体重を掛け一歩一歩よろけながら進みます。

○そこへ75歳のジイサンが意気揚々と下ってきました(チキショウ!!)2つ目のピークに立つと眼前に藪を被った山頂が広がります。ピークの登山者から「頑張れ!」の声援をいただき、気力を振り絞って山頂にたどり着きました・・・精根尽き果てた(6時間20分もかかってしまいました)

恋い焦がれた頂に立つ!○恋い焦がれた憧れの頂では、手造りの山頂標識が温かく迎えてくれました。ここに居るのは山のベテランばかりです。お互いに譲り合いながら写真を撮ります。晴れ渡った青空に白いスカイラインが浮かびます。周囲の山々360度の展望は見飽きることがありません。それにしても大笠山は指呼の距離です。この邪魔者の無い雪の稜線でしたら簡単に往復できそうです。

○相変わらず食欲はありませんが、無理やり甘いものを流し込みます。いつまでも休んでいたいところですが、帰りの路も遠いので腰を上げましょう。雪の状態が問題ないので帰りも冬瓜山を越えて行きましょう。重い脚を引きづりながら急な下りを慎重に下ります。少しでも気を緩めると足に踏ん張りが利かず滑落しそうで恐ろしい。そんなことで緊張の糸が途切れることはありませんでした。

○ようやく野猿の広場ですが、手前の沢が増水していて渡ることが難しい。ゴォーゴォーと物凄い音量で急流が迸ります。先行の3名はザイルを出して渡って行きました。我々は少し上流でストックを流れに突いて必死の思いで対岸の岩に飛びます。濡れた岩は滑りやすくバランスを崩したら流されてしまいそうです。何とか着きましたが観察小屋には崖を下りなければなりません。ここをクライムダウンして無事着地いたしました。本日一番の緊張した場面でした(まったく最後まで気が緩められないすごい山です)

○11時間半もかかりましたが、何とか明るいうちに帰ってくることができました。体調不良で一時はどうなるかと思いましたから、登頂の嬉しさもひとしおです。身体はボロボロになってしまいましたが、心は満足感で充実しています。疲れてはいますが明日のために五箇山に戻りましょう。道の駅上平にある美味しい店は休みでがっかりでしたが、蕎麦屋が開いていたのでラッキーでした。生ビールと山菜蕎麦定食で生き返る登山隊でした。これで今回の山旅のクライマックスは越えました・・・今晩はぐっすりと眠ることができそうです。



2011年の記録へ