槍ヶ岳

槍沢上部から槍ヶ岳を望む



【行程】 9/10(金)晴れ[新宿23:08=(さわやか信州号)=]
9/11(土)晴れのちガス[=上高地5:42/6:13−明神7:06−徳沢8:54−横尾8:54−一ノ俣9:45−槍沢ロッヂ10:21/10:36−水俣乗越分岐11:33−天狗原分岐12:29−坊主岩屋下13:25−殺生ヒュッテ分岐14:28−槍ヶ岳山荘15:18(泊り)]
9/12(日)雨のち晴れ[山荘6:13−槍ヶ岳6:33/6:36−山荘6:57−天狗原分岐8:23−水俣乗越分岐9:18−槍沢ロッヂ10:30/10:54−一ノ俣11:29−横尾12:20−徳沢13:10−明神14:03−上高地15:03/16:00=(さわやか信州号)=新宿21:18]
【メンバー】 隊長、仕立て屋ぼん




○「仕立て屋ぼん」から槍ヶ岳に登りたいとの相談を受けてから2年半たち、早くも3シーズン目が終わろうとしています。還暦を迎えて子供から装備を贈られ、槍ヶ岳への想いが日毎に募る「ぼん」ですが、隊長は公私ともに忙しく、なかなか日程が取れません。ところがついに会社まで催促の電話が来るに及んで(最近は悪徳サラ金でもやりません)ようやく重い腰を上げたのでした。

朝から観光客で溢れる河童橋と焼岳○「時間が無いところは体力でカバーだ!」まったく懲りない隊長です。夜行1泊の弾丸ツアーで、上高地から槍沢経由のピストンといたします・・・昔はこういうのを神風登山と言いましたっけ。コースは整備されているので初心者向きですが、行程が22Kmと長いので体力勝負の企画となりました(もし途中で挫折しても営業小屋が多いので安心です)

○新宿のバス停に着いたら、評判の山ガールが多いのに驚かされます。流石にミーハーな上高地行きバスです。ギャルの歓声に囲まれて「さわやか信州号」は定刻に発車しました。9年ぶりの上高地は爽やかな朝でした。梓川に架かる河童橋から眺める穂高岳や焼岳は、いつ見ても良いものです。

槍沢ロッヂ上から穂先が望まれる○横尾の道標に「上高地11Km・槍ヶ岳11Km」とあり『ここが真ん中だー』と喜びますが・・・標高差で言えば1640mのうち55m(3%強)しか登っていません(ガックリ)ようやく一ノ俣手前から山道となり登山モードに入ります。槍沢ロッヂの広場には望遠鏡がセットされ、槍の穂先が眺められました(俄然、盛り上がる気分)ここから徐々に傾斜がきつくなり、水俣乗越分岐を過ぎると森林限界を越え太陽は容赦なく照り付けます。

常念岳の白い岩肌が緑の稜線から顔を出す○ガレた道をジグを切りながら高度を上げて行くと天狗原分岐です。正面の槍が次第に大きくなり、振り返れば常念岳の白い岩肌が緑の稜線から覗き始めます。ヒュッテ大槍分岐からは苦しい胸突き八丁です。幸いガスが流れるようになり、炎天下での酷い登りは避けられました。でも朝からの長丁場に脚は悲鳴を上げています。殺生ヒュッテ分岐からは息も上がり青息吐息です。風が強くなり、どんどん気温が下がって肌寒いくらいです。

○何とか槍ヶ岳山荘に3時半前に着きました。予定通り山頂へ向かおうと思いましたが・・・ガスで展望が得られないし、タイイング悪く「ぼん」の脚が攣ってしまい、穂先のアタックは翌朝といたします。そうと決まれば酒と肴を持って談話室へ突入する登山隊です。

○明日の晴天を祈って就寝しましたが・・・夜中に暴風雨の音で目が覚めます。ガタガタと小屋が小刻みに揺れる突風に、隊長の小さな胸は不安で張り裂けそう。朝になっても風は止みませんので、アタックは朝食後といたします。表に出るとガスで真っ白ですが、風と雨は少し納まりました。カッパを着て空身で出発いたします。

○見通しが利かないので、12年前の記憶を辿りながら穂先の基部を目指しますが、足下の踏跡だけが頼りです。基部からは岩に描かれた白ペンキマークを忠実に辿り高度を上げて行きます。こんな天気ですから、あたりには他の登山者の気配はありません。「ぼん」には基本動作の3点確保、ハシゴの登り方、落石への対処法など教えながら登ります。俄か勉強でしたので果たしてどこまで理解したのやら?・・・時々強まる風と雨脚に心が挫けそうになります。

荒天の槍の穂先にて○鎖やハシゴは冷たくて、軍手をしたのは正解でした。最後のハシゴは垂直7mで、ハング気味の岩に直立し高度感は抜群です。気を引き締めてハシゴに手を掛けた瞬間に突風が襲ってきました。思わず耐風姿勢でうずくまります。風の息をついて一気に上りきると、三角点と社のある山頂でした。もちろん誰もいません。ガスはありますが奇跡的に風雨は弱まりました。記念写真を撮ったら即退散いたします。

○「下りは、より慎重に」濡れた岩場を手本を見せながらゆっくりと下ります。基部まで戻ると強風と横殴りの雨が迎えてくれました。こんな天気では新たにアタックするアホはいません。小屋にデポしたザックを担いで一気に下ります。途中で大粒の雨が落ちてくる場面もあり、天狗原分岐あたりまでガスは晴れませんでした。

○ここから「ぼん」が次第に遅れるようになってきました(もちろん通常のスピードよりかなり落としているのですが)「どうしました?」「脚が棒になった!!」とは意味不明ですが、傾斜を下る時に腿に激痛が走り、苦痛に顔を歪ませています。急ブレーキとはこういう状態なのでしょうね。なんと槍沢ロッヂまで1時間のところを倍の2時間もかかってしまいました。帰りのバスの時間が気になり焦る隊長(余裕で上高地到着との目論見でしたが、いきなり黄信号です)

○しかし傾斜が緩くなるにつれてスピードが戻り、3時すぎには上高地に到着いたしました。河童橋からは観光客の合間を縫って駐車場に戻り、無事の帰還を祝ってビールで乾杯です。今回は日程に余裕がなく、夜行1泊で槍ヶ岳を狙うという体力勝負をいたしました。でも猛暑で鍛え方の足りない「ぼん」には少々荷が重かったようです。これに懲りず更にステップアップしていただきたいものです。それにしても初心者を連れて、風雨のなかでの穂先へのアタックには痺れました。もろもろの心労でお疲れの隊長は、帰りのバスでは爆睡いたしましたとさ。



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