有明山

早朝の安曇野から有明山を仰ぎ見る


【行程】 11/2(日)快晴 [豊科H7:05=(車)=表参道入口7:53/8:00−妙見滝9:20−大岩10:21−稜線10:51−北岳12:16−中岳12:31/12:53−有明荘14:45/15:20=(タクシー)=黒川林道入口15:40−登山口15:52/16:03==伊那北H17:48(泊り)]
【メンバー】 隊長、林道の鴉天狗



○さて今回の遠征のメインイベントは有明山です。中房温泉から裏参道を往復される方が多いのですが、廃道状態だった有明神社からの表参道が最近整備されたようです。折角ですから表参道から裏参道への縦走を試みたいと思います。晴れ渡った安曇野からは常念岳の特徴のある三角錐が眺められ、街道の先には鹿島槍と五竜の真っ白い峰が浮かびます。中房温泉への道に入ると正面に有明山が立ち上がり、暗い影の中に急峻な山肌を見せてくれます。

○黒川林道入口には車が1台停めてあり我々のスペースがありません。こうなったら林道の奥まで車で突入です。落ち葉の積もった林道には落石もあり実際よりも狭く感じられます「本当に通れるのだろうか?」鴉天狗の独り言ですが、もう戻るには遅すぎます。運を天に任せて突っ込みましょう(ひとの車だからお気軽な隊長でした)

○何とか登山口に着くと数台の駐車スペースがありました。ここから沢を丸木橋で渡り樹林帯に入りますが、落ち葉で覆われた道は判然といたしません。勘を頼りにテープを拾いながら沢沿いに奥へと進みます。左岸に移ると落差のある妙見滝が左の岩壁に現れます。ここで鴉天狗の腰に着けたデジカメが無いことに気づきます「きっと車に忘れてきたんだよ」はかない望みを託しましょう。

白河滝の岩場を鎖に掴まり登る4人組○真新しい鎖に助けられて岩壁を越え、伏流となった岩場を進むと「白河滝」が前方に現れます。岩の上から豪快に流れ落ち風に運ばれた水しぶきが掛かります。右側の垂直に見える岩場を鎖に掴まった4人組が登っています。我々も取り付きますが「ラクッ!」の声に固まりました。前方で最後尾の人の顔に小石が当たったようです。大事には至らなかったようですが、恐いので少し間を空けて歩くことにいたしましょう。

○長い鎖場が終わると痩せ尾根の急登がこれでもかと続きます。気温も上がり始め汗ダクになりながら高度を稼いで行きます。大岩の間を潜り抜ける場所で休憩中の先行パーティを抜きますが、主稜線の手前で追いつかれてしまいました。執拗に迫るオジサンに鴉天狗の二段ロケットは不発に終わり、団子状態のまま稜線の松川分岐に到着です。稜線では冷たい北風がまともに当たり、汗は一気に引っ込みました。

○痩せた稜線の岩場には梯子や鎖が掛かり、どんどん高度を上げて行きます。昨日の積雪が次第に深くなり慎重に脚を運びます。胸ポケットから地図を出したときに一緒に入れていたメガネが無いことに気づきました。5分ほど前の休憩で落としたのではないでしょうか、あわてて探しに戻ります。途中で後続パーティに忘れ物したとか言い訳して恥ずかしい思いをしました。

○しかし休憩地点にメガネはありませんでした。こんな失意の隊長を救ったのは呼子の音でした。鴉天狗の前を通過した後続パーティ最後尾のオジサンが、雪のトレースの上にメガネが落ちているのを見つけてくれました。落としたのは休んだ場所ではなく地図を出したときだったのですね。それにしても奇跡的に踏まれもせずに発見されて助かりました。

中岳山頂の祠(後に雪を被った燕岳)○高度が高くなるに従って雪の状態は悪くなります。梯子・ロープの連続ですが、急坂には雪がべったり着き一瞬たりとも気が抜けません。北風に吹かれてロープを握る手も凍えそうです。最後の厳しい登りを終えると北岳の頂上でした。少し南に三角点があり北アが望まれます。ここで松川から来た単独行と会いましたが、松川からの道はかなり厳しいようです。更に南下すると祠のある中岳です。

中岳にて常念岳をバックに○雪を被り陰影の濃い北アルプスの山々が正面に望まれます。日頃見慣れない角度で常念岳から大天井岳、燕岳、餓鬼岳までのパノラマが展開していました。冷たい風の中でしたが、息を飲むような美しさに暫し時を忘れて見入ります。

○下りは我々が先行します。裏参道とはいえメインルートらしく良く整備されています。雪もすぐに無くなり危険な下りはありませんでした。30分ほど下ったところで登ってくる老夫婦に出会います。山頂まであと1時間と聞いて登頂は諦めたようです、今からでは下山は暗くなってしまいますからね。

○スピードを上げたので2時間掛からずに有明荘に辿り着きました(・・・ヨレヨレですが)有明荘の公衆衛星電話でタクシーを呼び、温泉で汗を流します。桧の湯船に溢れるお湯は源泉100%の掛け流しです。染み渡るようなお湯の力で身体の緊張は徐々にほぐれてゆきます。露天風呂の脇にある楓は行く秋を惜しむように紅葉真っ盛りです。湯煙にかすむモミジには愛でる言葉は不要でした。

○黒川林道入口でタクシーを降り数分歩いて登山口の車に戻ります。結局、鴉天狗のデジカメは車にはありませんでした。奇跡は何度も起こりません・・・起こらないからこそ奇跡なのでしょう(残念!)有明山は期待を裏切らない素晴らしい展望と充実感を与えてくれました。とくに表参道は変化に富んだ歩き甲斐のあるロングコースでした。



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