静かな北アルプス

種池〜針ノ木岳〜蓮華岳〜不動岳〜烏帽子

赤沢岳下りから針ノ木岳を望む


【行程】 7/18(金)曇り [新宿23:57=(ムーンライト信州81)=]
7/19(土)快晴 [=信濃大町5:08/5:16=(タクシー)=柏原新道入口5:42/5:46−ケルン6:45−水平道7:40−種池山荘8:32−岩小屋沢岳9:50−新越山荘10:23/10:37−鳴沢岳11:21−赤沢岳12:08−スバリ岳13:52−針ノ木岳14:46−針ノ木小屋15:33(泊り)]
7/20(日)小雨 [針ノ木小屋5:45−蓮華岳6:43−北葛乗越7:25−北葛岳8:26−七倉乗越8:58−七倉岳9:48−船窪乗越10:27−船窪岳10:45−船窪第2ピーク11:57−コル12:33−不動岳14:15−南沢乗越14:58−南沢岳15:51−烏帽子岳分岐16:54−烏帽子小屋17:28(泊り)]
7/21(月)快晴 [烏帽子小屋6:48−三角点7:34−水場9:00−高瀬ダム9:20=(タクシー)=葛温泉9:30/10:55=(タクシー)=信濃大町11:20/11:35=(JR)=松本12:36/13:02=(スーパーあずさ18)=八王子15:07/15:20=(JR・東急)=たまプラーザ16:08]
【メンバー】 隊長、関の三本松



○「海の日」の三連休は北アルプスに行く計画を立てますが同行者がいません。いろいろ声を掛けて見ましたが皆さん都合が悪いようです。諦めかけていた所へ昼食で隣り合わせた若者に白羽の矢が立ちました。これぞ灯台元暗し、隊長の粘り強い説得の前に若者の心は揺れました・・・悲劇の始まりかも

○今回のコースは北アルプスの主脈縦走路で最も人気のない不遇の地域です。山小屋の数が少なく間隔が空いているので一日の行程が長くなります。日程は夜行2泊しか取れないので、軽量カモシカで一気に駆け抜けましょう。流石に三連休です、ムーンライト信州は満員でしたし、登山口にも車が溢れかえっていました。これでは山小屋の混雑が心配です。

稜線からは雪を被った剣岳・立山のパノラマが眺められる○今日は11時間20分のコースタイムですから、涼しい朝のうちに高度を稼いでおきましょう。狭い夜行列車の座席に睡眠不足の隊長でしたが、元気一杯に柏原新道を登り始めます。タイムを約1時間短縮して3時間弱で種池に到着です。稜線に出ると正面に黒々と剣岳が望まれ、雪の残った立山が左手前に聳え立ちます。右手前方には鹿島槍ヶ岳の特徴のある双耳峰、奥には五竜から白馬岳まで遠望できました。

ヘロヘロになりながら着いた山頂にて○所どころに雪の残る縦走路は良く整備されていて、登山客のいない静かな稜線漫歩が約束されています。鳴沢岳を越えて赤沢岳までは順調に参りましたが、ここからが厳しい試練でした。スバリ岳の登りは炎天下で太陽から隠れる術はありません、頭はクラクラ、脚はフラフラ、腰まで痛くなり、コースタイムを超過して山頂に倒れこみました。

針ノ木岳の正面には伸びやかな蓮華岳が望まれる○眼下には黒部湖の大きな湖面が深い緑の中で白緑色に輝いています。涼風に息を吹き返した隊長は、目の前に聳える針ノ木岳に闘志を燃やします(しかし脚が・・・)ようやく辿り着いた山頂には人の影がありません。少し霞の掛かった展望でしたが360度の山々を楽しみます。前方には蓮華岳が大きな山容を見せていました。振り返ればスバリ岳、赤沢岳から種池への長い稜線が望まれ、しばし歩きとおした充実感に浸ります。

○下りは雪渓が50%ぐらい残っていました。急な斜面ですから滑ったら一巻の終わりです、キックステップで慎重に脚を運びます。緊張の30分間でしたが何とか無事に小屋に到着、早速ビールで乾杯です。ここで信じられない光景が目の前で展開しました。針ノ木雪渓の急斜面をカッパの上下でグリセードーするパフォーマンスおじさん。あっという間にコケて制動できずに登ってくる登山客に激突!・・・馬鹿は死ななきゃ治らない

そこかしこにコマクサの大群落が続く○2日目は核心部なのに朝から小雨です。天気予報では晴れのはずですが・・・とボヤキの隊長。昨晩は1畳に2人の混雑で、あまり良く寝れませんでしたのでご機嫌悪し。本日の行程は13時間20分と長丁場です、気を引き締めて参りましょう。雨露に濡れたコマクサの群落が続く路を黙々と登ります。雨の強い蓮華岳の山頂はガスで展望はありませんから即下ります。

○蓮華の大下りを一気に降りると長い鎖場の下が北葛乗越です。振り返ると岩の壁が立ちはだかり逆コースでは辛いものがあります。痩尾根を登ったり降りたり梯子を伝うアドベンチャーが続きます。七倉岳を過ぎたところで時間も無いので、船窪小屋に寄らずに縦走を続けます。

○テン場の先は南側がスッパリと切れ落ちた痩尾根です。崩れ易い砂岩の崩落で足元が大きく抉り取られて道が消失しつつあります。船窪乗越から一登りで船窪山ですが、地図の船窪山は第2ピークでもうひとつ先です。この辺りから気温が上がり虫の活動が活発になり始めました。ブヨの大群に纏わりつかれ、目・耳・鼻・口に飛び込んで来る自爆テロには閉口いたします。

○不動岳の堂々とした雄姿に見とれる隊長(内心は350mの登りに茫然自失)しかし天は登山隊を見捨てませんでした。折から天気が悪化し太陽が隠れ、涼風も吹き始めます、気温が低下し虫も引っ込みました。渾身の力を振り絞って山頂を目指します。ここまで来れば烏帽子小屋までは3時間です、ようやく目処が立ちました。

○ところが下りで急な雪渓が現れました。途中から傾斜がどんどんきつくなって、冷や汗をかかされました。南沢岳への最後の登りは厳しかった。脚が上がらないだけでなく、吐き気までしてくる始末です。こんなことは隊長の長い山登り経験のなかで初めてです。それでも若手に励まされノロノロと一歩一歩脚を進めます。『嗚呼、歳は取りたくないものです』・・・魂の叫び!

○南沢岳を越えると花崗岩帯にコマクサの群落です。愛でる余裕は失せましたが未だ気力は尽きません。四十八池は雪の中で道を失いそうになりながら、何とか烏帽子岳との分岐に着きました。隊長は烏帽子岳に寄る余裕がありません、相棒には申し訳ないがパスさせてもらいます。烏帽子小屋にはヘロヘロになりながら5時半に辿り着きました。遅いので夕飯はカレーの別メニューでしたが、夕食にありつけただけでも幸せです(謙虚な登山隊ですハイ)

ブナタテ尾根から不動岳、南沢岳○3日目です。一人一枚の布団でグッスリ眠った隊長は疲れも取れて元気一杯です。でも大事をとって烏帽子岳には参りません。相棒一人でピストンですが、何と1時間で往復してきました。あとはブナタテ尾根を一直線に下るだけです。小屋の裏の展望台からは大きな不動岳から南沢岳、烏帽子岳へのパノラマが展開します。

○暑いブナタテ尾根を下ると待望の水場です。登山口の水場は崩れていて50mくらい下流になっていました。冷たい水が五臓六腑に染み渡ります。見上げれば餓鬼岳、唐沢岳が青い湖水に映ります。吊橋を渡りトンネルを抜けると待ちに待った高瀬ダムです。客待ちのタクシーで葛温泉に参りましょう。高瀬館で3日間の汗を流し露天風呂に浸かれば蓄積した疲労が溶けてゆくようです。

○松本で「スーパーあずさ」の席に座れば、三連休の冒険山行も次第に遠い思い出となります。今回のコースは人の少ない静かな山旅が楽しめました。古いアルプスの雰囲気が残る貴重な山域と言えるでしょう。今まで見たことのないようなコマクサの大群落も一見の価値ありです。初めて同行した関の三本松君には大変お世話になりました。思えば親子ほど歳の離れたパーティでしたが、支えあい初心を貫徹することが出来ました。



2008年の記録へ