下仁田九峰(その2)

藤山・浅間山・伊勢山・(三峰山)・稲含山

下仁田の町から藤山(一番左のピーク)を望む。555m三角点は一番右のピーク


【行程】 4/5(土)快晴 [たまプラーザ4:33=(車)=千沢P7:05/7:21−藤山7:43/7:55−P8:15/8:20==火葬場P8:30/8:32−浅間山8:49/8:58−P9:10/9:14==妙見堂入口P9:20/9:22−伊勢山9:41/9:50−P10:08/10:15==宮室P10:25/10:30−三峰山11:07/11:24−P11:48/11:55==高倉上P12:17/12:20−鳥居峠13:40−稲含山14:28/14:40−鳥居峠15:01−P16:05/16:15==たまプラーザ20:17]
【メンバー】 隊長、林道の鴉天狗



藤山(ふじやま)453m(富士山)
○前回の遠征後に下仁田九峰について色々調べてゆくと「新ハイキング」誌で取り上げた藤山(555mの三角点)について数々の疑問が生じました。その結果どうやら我々の登った藤山はガセだったのではとの疑惑が色濃くなってきました。そういうことなら正しい藤山に登らなくてはなりません。情報を集めて再訪することにいたします。

○千沢の集落で消防用ホース格納箱のところから私道に入ります。直ぐに杉林となりマークの所から左の尾根に取り付きます。細い踏跡の厳しい道を登ると木々の間から右上にドーム型の岩峰が聳え立っています『もしかして、あれが目指す山頂?』めげそうになる闘志を奮い立たせて先に進みます。

藤山の山頂には古くからの信仰の対象としての証があった○道は左に大きく回り込み落葉に埋もれた斜面をトラバースして行きます。道は不明瞭ですが落葉を掻き分けながら進むと、兄倉山や鹿岳などが望まれる小さな展望台に着きます。少し先に赤い鳥居があり、ここから山頂まで急な登りが続きます。

○山頂からは先ほどの岩峰が目前に聳え、南に続く稜線はなかなか迫力があります。明るい山頂には古い富士山の標識が2つ(1つは裏に藤山の記載あり)と富士浅間神社の石祠が祭られていました。地元では古くから信仰の対象としてこの「藤山」を大切にしてきたことが窺えます。

○麓から見上げますと富士山の形に見えなくもありませんので「ふじやま」と呼ばれて来たのでしょう。前回の藤山には三角点の他には宗教的な遺物は一切無く、どうやら勝負はついたようです。でも下仁田の町からは前回の藤山までが鋭い稜線とともに一群の峰々と眺められますので、どこかで最高点の三角点峰との錯誤があったのでしょう。



浅間山(せんげんやま)435m
白い双峰の浅間山 ○この山は下仁田の北方に位置し2つの白い岩峰が特徴的です。なかなか情報が無かったのですが点の記には「火葬場から北側の鞍部に詰め稜線を南下する」道筋が記されていました。得意げに点の記を示す隊長に鴉天狗の冷めた一言「これって40年前の記録だよ」

○駐車場の奥から山への道を進みます。手入れはされていませんが立派な道でした。やがて鞍部を目指して登りはじめますが分岐が多く選択に迷います。山勘で真中を選択すると大当たりで鞍部に突き上げます。ここからは細い稜線を南下いたしましょう。ところが瘤の手前で弱気になりトラバースする踏跡に入り込んでしまいます。どんどん稜線と離れ最後は泥壁の直登となり要らぬ苦労を買って出る始末。

○山頂の南側は崖となっているので展望抜群で、そよぐ風に汗も乾き気持ちの良い場所でした。2週間前には梅の花が満開だった山里も、今では桜の花が咲き誇り春爛漫。上から覗くとまるでピンクの霞がかかったようです。北側の展望は山頂直下の稜線上から遮るものなく眺められ、正面の鍬柄山が堂々として眩しいくらい。



伊勢山(いせやま)362m
こんもりとした伊勢山伊勢山妙見尊の幟○浅間山の西隣にひっそりと佇むこんもりとした丘です。ここには伊勢山妙見堂があり古くから地域の信仰を集めていたようです。今も参道には幟が何本も立ち、各地から参詣に来る人が絶えないように見受けられました。この妙見堂まで石段を登り、お堂の右奥から荒れた道を辿り尾根に出ます。

○しばらく登ると前ピークで少し複雑な地形の稜線を忠実に辿ると、最後は少しの急登で雑木林の山頂です。山頂には古い石搭の残骸が散らばり往時の信仰の跡が窺われますが、現在は荒れ果てています。山頂からは眼前に浅間山の西峰が聳え、目を転じれば南牧方面の山々が意外な近さで眺められます。展望は期待していなかったので思わぬ成果にほくそ笑む隊長でした。

○この山は林業関係のテープ類が多く、注意していないと下りで間違える可能性があります(まあ間違えても大した危険はありませんが)山から下りたらまだ10時を過ぎたところです。さて次に向うのは何処の山にいたしましょうか?


三峰山(みつみねやま)616m(富士浅間山・宮室山)
伊勢山から三峰山を望む(手前は川井山)○この山は下仁田九峰には入りませんが、下仁田から眺めた三つの頂の姿が特徴的な信仰の山です。ということで特別参加となりました。実は稲含山への林道が昨年の台風9号によって不通となり、長い林道歩きに食指が動かずに代替案となった次第です。

○宮室バス停そばの富士浅間神社から登り始めます。社の裏の急な尾根を30分ほどで稜線にでました。杉林の中の道はかなり踏まれてしっかりしているので安心です。稜線を右に行くと古ぼけた鳥居が建つピークで、ここから細い稜線を辿り急な登りで杉木立に囲まれた山頂です。

なんだかなぁ○うっそうとした山頂の真中には石の祠が祀ってあります。地元の方の立てた山頂標識には富士浅間山(宮室山)との山名が記入してあり、木に架かった「三峰山」標識には赤で×がしてありました。まあ地元の方の気持ちも判らないではありませんが、山容から三峰山と呼ばれていますので寛容の精神でお願いしたいものです。

○山頂で昼食を摂ってから下ったのですが車に着いたのはまだ12時前です。朝から4山も登り少々草臥れましたが、時間があるのでこのまま帰る訳にはまいりません。稲含山を諦めきれずに念のために反対側の甘楽町からの道路事情を確認しますが、やはり不通とのこと。仕方が無いので下仁田側からチャレンジすることといたしましょう。



稲含山(いなふくみやま)1370m
林道から稲含山を仰ぐ○下仁田から藤山・大山の奥にひと際高く聳える稲含山は下仁田九峰の盟主に相応しい山です。山頂直下には稲含神社の立派な社が建ち、古くから信仰の山として賑わってきました。ところが近年では山頂へ30分の鳥居峠まで林道が開通し簡単に登れる山となってしまいました。

○登山隊も8年前に林道工事中に鳥居峠まで強引に車で入り込みました。安易な登頂を果たしたのは良いのですが、吹雪の中の脱出行となりノーマルタイヤで冷や汗を掻いた思い出があります。今回は昨年の台風で林道が崩壊し高倉の上で通行止めなので延々と歩くことになります。

○4月とはいえ汗ばむ陽気の中を1時間20分の林道歩きです。途中で旧道のショートカットを取り入れますが、600m強の標高差を登る林道はクネクネとカーブを繰り返し徒に歩行距離を延ばします。気分が悪くなるような炎天下の林道歩きも送電線の見える鳥居峠でようやくお終いです。

稲含山の山頂標識(8年前は吹雪の中でした)○登山開始早々に下山してくる2人づれと会いました『おかしいなぁ、何処から来たんだろう?』お互いに訝しながらすれ違います(どうやら林道を上ってきたようです)登山道は階段や鎖、はたまたフェンスに守られて西上州の山に来たような気がいたしません。山頂直下の北側斜面には雪が残り、滑り易い足下に気を配りながら突破します。

○山頂からは360度の大展望で、今までの下仁田九峰とはレベルが数段違います。特に赤久縄山や西御荷鉾山など稲含山の陰になっていた山々が、眼の前に展開する様は感動的でありました。遥かに八ヶ岳や日光白根山など遠望することが出来、春霞が恨めしいほどです。でも前回は吹雪で何も見えなかったので大満足の展望でした。

○帰りはひたすら林道を下ります。以前の登山道は影も形も見えず、茂垣へ方向を定めて林に突入も考えなかった訳ではありませんが、鴉天狗が茨の棘に恐れをなして隊長の空想を踏み留まらせてくれました。林道の修復にはまだ時間が掛かりそうです、下仁田町も古い登山道を復活させるなど登山者の便宜をはかられんことを切に望みます。

○これで下仁田九峰の旅を終わります。藤山の再訪と付録の三峰山はありましたが、2日間を目一杯使っての周遊でした。情報の限られる中でしたが新ハイキング誌の記事をネットなどで補強して、より正確に回ってきたつもりです。この過程で隊長は西上州藪山の新たな魅力の虜になってしまいました。


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