苗場山〜赤倉山〜佐武流山

苗場山からの縦走路から佐武流山を望む



【行程】 9/17(土)曇り時々小雨 [たまプラーザ4:45=(車)=栃川高原9:32/9:45−3合目10:13−ヨモギウド沢渡渉11:07−5合目11:47−6合目12:24−小赤沢分岐13:42−苗場山14:19/14:25−山頂ヒュッテ14:28(泊り)]
9/18(日)快晴のち晴れ [山頂ヒュッテ4:27−コル6:03−赤倉山6:54−ナラズ山8:02−土舞台8:32−ワルサ峰分岐9:11−佐武流山10:18/10:42−ワルサ峰分岐11:16−ワルサ峰11:58−物思平12:43−檜俣川渡渉13:21/13:35−林道分岐14:17−ドロノキ平15:04−栃川高原15:41/15:49==小赤沢楽養館16:04/16:40==たまプラーザ23:13]
【メンバー】 隊長、林道の鴉天狗




○いよいよ最後の200名山です。佐武流山は苗場山と白砂山を結ぶ稜線上にある孤高の山で、以前は登山道がなく残雪期か猛烈な藪漕ぎの末に登られていました。2000年に地元の有志によって山麓からの道が開かれ、健脚であれば誰でも登れる山になりました。ところが本屋で最新のエアリアマップを見ていたら、驚くべきことに苗場山から佐武流山まで一般道が通じているじゃありませんか(2003年開通)


○この縦走路を使えば200名山の最後を飾るに相応しい魅力的な周遊コースとなります。和山温泉の上にある栃川高原から平太郎尾根を経由して苗場山の山頂ヒュッテ泊ります。翌日は赤倉山を経て佐武流山まで縦走しドロノ木平に下山、国道405を3Km歩いて車に戻ります。ただし2日目はコースタイムで12時間強の長丁場となりますが・・・まぁ天気が良ければ何とかなるでしょう(・・・楽天的な隊長です)


○ところが9月の3連休は天気が安定しません。日本列島を挟むように来襲する台風15号と16号の影響で、山沿いは断続的な大雨注意報です。直前の天気予報では、初日は曇り時々雨、2日目は前線の南下で午後から雨の予報です。それに加えて台風12号の大雨による国道405の不通や登山道の被害状況も心配でした(コースに2か所の渡渉点あり)


○関越道で断続的な大雨に遭遇した時は萎えましたが、清水トンネルを抜けると雨は上がりました。秋山郷では今にも雨が降りそうなどんよりとした空で、正面の鳥甲山も山頂付近は雲の中です。登山口から林道を進むと栃川を鉄の小橋で渡ります。ここからは小さな道標に導かれて、左折後に崖を上がって登山道に入ります。


○良く踏まれた道を歩いていると「アッチッチ!!」突然、鴉天狗がしゃがみ込みます。また蜂にでも刺されたのかと思いましたが・・・脇の斜面から音もなく石が降ってきて脹脛に激突したらしい「もう歩けないから帰る」「そりゃぁ無いぜよ」しばらく休んでから杖を突きながら登山を再開しますが、痛々しい限りです・・・まったく不幸は何処に転がっているかわかりません。


○ヨモギウド沢に出ると生々しい濁流の傷跡が残っていました。道は河原でぷっつりと途切れ一面に流木の世界が広がります。目を皿のようにして対岸を探りますが、渡渉点が見つけられません。河原に下りると大きな倒木の下にトラロープが絡み付いているのを発見しました。どうやらこの辺りが渡渉点のようです。幸い水量は大したことなく靴を濡らさずに飛び石伝いに渡渉できました。後から来る人のために木の枝に赤布を結んでおきましょう。


苗場山の小湿原は木道も無く原始そのまま○沢からはロープを伝うような急登で、汗をかいて稜線に出ると4合目です。ここからは気持ちの良い稜線歩きでした(ただし急登です)静かな山道にチリンチリンと相棒の熊鈴が響き渡ります。この先で2人連れが下ってきましたが、このルートで人と出会うとは思いもよりませんでした。傾斜が緩くなり原生林が途切れると小さな湿原が現れます。黄色みを帯びた草原は一足早く秋の装いです。木道の無い草原を横切るときに幸せを感じるって・・・悪い人なのでしょうか?


○小赤沢からの道を合わせると流石に人の姿が見られるようになります。山頂まで湿原のなかの木道を辿ると、空を映す池塘には静かに風が渡ります。薄いガスが出てきましたので、山頂で写真を撮ったら鐘を鳴らして山頂ヒュッテに入ります。今日は50名で空いているとのこと。明日は佐武流山と告げると「雨だったらどうする?」「小雨なら行きます」「赤倉山から先は笹が刈って無いのでお勧めしない」「でも縦走路は笹刈り済と聞いてますが」「笹刈りしたなら俺が知らないはずがない」「・・・・??」俺様オーラに圧倒された隊長の胸は不安に押しつぶされそうでした。


○夜のBS天気予報で明日は曇り時々晴れとなり一安心。翌朝は弁当にしてもらい4時半に出発です。空には月と星が瞬き本日の好天を約束してくれます。ヘッドランプで出発しますが、始めは木道なので月明かりだけでも問題ありません。次第に明るくなる東の空からは太陽が姿を現し、一気に周囲が色鮮やかな世界に変わります。正面には佐武流山がどっしりと構え、手前には赤倉山がシルエットで浮かび上がります。


○笹は刈ってあり歩き易い道でしたが、足下が暗いので慎重に歩きました。赤倉山には2時間半とほぼコースタイム通りです。赤倉山の先もしっかりと笹が刈ってあり、心配していた笹漕ぎは杞憂に終わりました(本当にもう連携が悪いのだから)お蔭で快調に飛ばすことができて、ナラズ山へは1時間強で到着でした(コースタイムは1時間50分)上空には雲一つない青空が拡がり、まるで隊長の200名山完登を祝うようなピーカンです。昨日の予報からは想像できないほどの好天に恵まれました。


ついに200名山完登!○次第に近づく佐武流山でしたが、土舞台から先は気ばかり焦ってなかなか着きません。この時間になると太陽の恵みも過剰となり、木陰の無い炎天下は死の行進です。鞍部を過ぎて水場への道を分けてからの登りがシンドかった。西赤沢源頭に着くと倒れこむように小休止といたします。


佐武流山から苗場山と縦走路を望む○山頂まではあと1時間の道程です。道は尾根の西側を通り恐れていた日差しは避けることが出来ました(ラッキー)山頂直下で下ってくる単独行とすれ違います「早いですね〜」「こんなシンドイ山は初めてだ!」と吐き捨てるように呟き去って行きました。


○いよいよ誰も居ない山頂に到着です。振り返れば苗場山のフラットな山頂が青空の下に輝き、赤倉山やナラズ山の険しい縦走路が眺められます。本当に良く歩いてきました。待望の山頂標識と記念写真に納まります。何といっても200名山完登の重みは心に浸みわたります。相棒も良くぞ付いてきてくれた・・・友情に感謝です。


○下りの途中で空身(分岐にデポ)の単独行と、西赤沢源頭の分岐ではお疲れの中高年3人パーティとすれ違いました。本日の佐武流山への登山者は我々を入れてもわずか7名でした(200名山で3連休のピーカンなのに?)果たして中高年パーティは明るいうちに下山できたのでしょうか?


○ここからの下りは半端ではありません。ワルサ峰までは炎天下にアップダウンの繰り返しで顎が上がりますが、救いは上昇気流の涼しい風が時々通ることです。ワルサ峰からは眼前に猿面峰の険しい山肌が望まれ、反対側には苗場山が嫋やかな山頂を見せてくれます。周囲の景色を堪能したら樹林帯の下りに入ります。随所にロープが掛かり木の根を越えて急降下の連続です。


○物思平で一服した傾斜は再び急激に降下し檜俣川に達します。沢の水は濁って水量はかなりありますが、ロープが張ってありますから靴を脱げば渡れそうです。ロープに掴まりストックを立てて腿まである流れを必死に乗り切りますが、意外に冷たい水に足の先は痺れて麻痺状態です。もうここまで来れば焦ることはありません、温かい岩の上でのんびりと回復を図りましょう。


○林道に上がり分岐から和山近道に入ります。ドロノ木平で国道に出ると、あとは栃川高原まで舗装された国道を歩きます。肉刺のできた足を引きづりつつカーブを曲がるとデポした車が迎えてくれました。帰りに小赤沢の楽養館に寄って汗を流して行きましょう。ここは鉄分で赤茶けた源泉掛け流しの湯です。すこし温めのお湯には力が溢れ、肩まで浸かれば2日間の疲労が溶けてゆくようです。


○初めての200名山は中2の林間学校で登った岩菅山でした。100名山も終わりスタンプラリーのような山行は止めようと思ったのですが、相棒に引きずられ何時しか熱くなってしまいました。300名山を目指していますから200名山は通過点にすぎませんが、自分の好きな山は200名山に多かったことに気づきます。まさに佐武流山はその心に残る一座であり、ここを200名山の最終地点に選択したことは間違いではありませんでした。




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