黒法師岳

稜線から霧氷に輝く黒法師岳を望む



【行程】 11/28(日)曇り一時晴れ(雪) [山王峡温泉6:46=(車)=戸中川林道ゲート7:22/7:30−登山口8:53−小ガレ10:02−稜線11:03−黒法師岳11:32/11:58−稜線12:16−小ガレ12:50−登山口13:21−林道ゲート14:28/14:46==たまプラーザ21:35]
【メンバー】 隊長、林道の鴉天狗




マニア垂涎の珍三角点 ○黒法師岳は三角点マニア垂涎の山です。何故かといいますと、三角点標柱の頭にある十字マークが+ではなくて×になっているからです。場所が南アルプスの深南部で、林道を6Kmも歩かなければならず、さらに急峻な山道を辿る必要もあり、中途半端な三角点マニアにはハードルが高い山です。

○山王峡温泉に泊まった登山隊は、ゆうゆうと朝食を取っての出発です。明るくなってから林道を通過したかったので、登り始めは7時半となりました。ダム湖畔を北上し分岐を右にとると、ダートの林道が10Kmあまり続きます。結構な高さの渓谷を奥へ奥へと進みます。やがてゲートで通行止めとなり少し戻って車を停めます。既に2台が駐車していて、準備中に単独行が到着です。静かな山を期待していたのですが、思いのほか人気の山域のようです。

○渓谷は紅葉が盛りを過ぎ枯葉が風に舞う風情です。黙々と林道を進み、1時間半で登山口です(0.5K毎のに標識があり励みになりますが・・・5Kが重複して現れガックリ)登山口で休んでいると単独行に追いつかれます。お互い東京からなので盛り上がりますが、若くて速そうなので先に行ってもらいます。

○案の定、急坂をグイグイと登って、あっと言う間に後姿は見えなくなってしまいました。隊長は唖然!登山隊もそれなりに健脚を自認していたのですが・・・『ああぁ、歳はとりたくないものです』(溜息)気持ちを入れ替えて自分たちのペースでコンスタントに登りましょう。

○落葉を踏みしめながら急登をゆっくりと確実に登ります。初冬の朝は冷気が勝り、息が上るものの汗はかきません。1時間で小ガレの細い稜線を渡り、再び急坂を登ります。木々の間からちらちらと見える主稜線は白く輝いています「まさか雪じゃないよね」念のために軽アイゼンは持っているものの、一抹の不安が過ぎります。

弁当が転げ落ちるような急傾斜ってこと?○稜線が近づくにつれて霧氷の輝きがはっきりと見えるようになってきます。北西からの冷たい風が山肌に当たり霧氷になっています。標高1900mから上は別世界になっているようです。弁当転がしの標識の手前で防寒具に身を包みます。高度を上げるに従って樹木が少なくなり寒風が直接当るようになり、薄い手袋をしていても指先が痺れる程です。

西斜面は冬山のような様相○稜線上は笹原となっています。西側は大きくガレ、東側には笹原が広がっています。南には霧氷で半分白くなった黒法師岳が聳え立ちます。西から雪を運ぶ冷たい風が吹きますが、東の笹原の上空には青空が広がります。笹原を通りガレを登り始めると冷たい風が横から当たり、これじゃまるで冬山じゃありませんか!鼻水を垂らしながら歯を喰いしばって登ります。

山頂は風も無く穏やか・・・でも寒い○東に目を転じると大無間山の奥に堂々たる富士山が望まれます。最後の登りを息を切らせながら一気に詰めると傾斜が緩くなり、笹原の中にバラ谷分岐の道標がありました。ここで先行した単独行と擦れ違います。エールを交換して歩き始めますが1分で山頂でした。山頂は平らな広場で木々に囲まれていますので風は来ません。ゆっくりと昼食をとっていたら、単独行と2人連れが到着です。野鳥の園からバラ谷を経て5時間半かけて来たそうです。軟弱登山隊とは大違い・・・流石は深南部です。

○暖かいコーヒーで生き返ります。珍しく昼食に25分もかけてしまいました。下りは正面から寒風が突き刺さり、フリースでは身体の心まで凍えそうです。でも等高尾根の下降点までの短い時間でしたから助かりました。転ばぬ先のストックを出し、快調に飛ばします。山頂から登山口まで1時間半で到着です。

○下りの林道歩きほど単調なものはありません。遥か先に単独行を認めると、一気に加速いたします(この時点で11分のビハインド)ほぼ時速6Kmで歩き1時間でゲートに到着いたしました。着替え中の単独行と挨拶を交わし健闘を讃え合います。先に駐車していた2台は居なくなっていました。山中で会いませんでしたから、我々とは違う目的地だったようです。

○今回の遠征ではこの地域に残った3座をまとめて登る予定でしたが、鴉天狗の寝坊というドジのため熊伏山が残ってしまいました。わざわざ熊伏山だけに来るのは大変ですが、300名山達成のためには避けては通れません。紆余曲折はありましたが晩秋の南アルプス深南部の静かな山旅を十二分に堪能できた2日間でした。帰りの東名は60Kmの渋滞でしたが、充実した山行で得られた高揚感の前には些細なことに感じられました。



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